20103.16 産経新聞より 産経抄
グルジアの偽ニュース事件
よーいどん 
●1941年12月7日の朝、オーソン・ウェルズが全米向けラジオ番組で、詩を朗読していた。突然、番組が中断されて伝えられたのが、真珠湾攻撃だ。歴史的ニュースにもかかわらず、ほとんどの聴取者は信用しなかった。
●理由はいうまでもない。3年前、ウェルズが手がけたラジオドラマ『宇宙戦争』のよって、全米がパニックに陥ったことを、知らぬ者がいなかったからだ。もっとも番組の冒頭では、ドラマだと断っていた。
●たまたま、他局の人気番組のゲストが、人気のない歌手だったために、数百万人もの聴取者が、ウェルズの番組に途中からダイヤルを合わせた。ドラマだと知らない多くの人が、火星人襲来を伝える”臨時ニュース”に、腰を抜かしたというわけだ。
●ウェルズが、それを予期していたのかどうかは、わからない。13日夜、グルジアの政府系テレビ局「イメディ」の流した偽のニュースは、もっと悪質だった。ロシア軍がトビリシに侵略し、サーカシビリ大統領を殺害した、との内容を30分にわたって放映した。
●「仮想シナリオ」だと釈明したのは番組の後だったという。2年前の8月に起こった、ロシアとの軍事衝突の記憶が生々しく残る市民が、パニックに陥ったのは当然だ。救急車の出動要請が相次ぎ、兵士の母親がショック死したとの情報もある。野党側は、シナリオを書いたのは大統領、と批判するが、真相はわからない。
●ウェルズは、一時騒動の責任を問われたものの、才能を変われてハリウッド入りを果たす。『市民ケーン』で、製作、監督、脚本、主演の4役をこなし、世間を再びアット言わせた。グルジアの偽事件のほうは、誰が黒幕にしろ、ハッピーエンドにはなりそにもない。
ヘッダ 2010.3.14 撮影(F)滋賀県愛荘町 びんてまり
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