2011年05月12日(木)
君へ (あとがき)

あれから一度すれ違ったけれど
気がつかなかったね
電話してたからだろうけど

もし君が見たら
君に望まれて一度だけ書いた手紙を
読んだ時のように
涙じゃなくて汗を流すんだろうか(笑)

拙い文章力をフルスロットルで
あからさまに書いた
小説にはならないけれど
あの時の約束を一つ果たしたつもり

そうそう
今 
あの時の会社を辞めて
おまけに一人暮らししている
これは約束じゃないけれど
君に言ったことだから
これも一つ果たしたつもり(笑)

心配いらない
一人は気楽でいい

君からもらったユーミンのカセットテープ
何度も聞いて擦り切れてしまったから
リンク集の中に何曲かいれといた

伝えたいことはたくさんあるけれど
青い空に出逢ったら
ごめんねってつぶやいて
君にできることを
残したまま
また 逢う?日まで とっとく
(笑)

いつも笑顔の
君の幸せを願ってる
これからも
どこにいても
君なら幸せになれると
信じてる
愛することを
教えてくれた君だから



【REINCARNATION】に
訪れてくださった皆様に心から
感謝いたします
ありがとうございます
皆様の足跡は正直に言って
書くという意欲の源でした

記事中の一部の表現は
なるべく言葉を選び書いたつもりですが
所々に不快に想われた方が
いらっしゃるようでしたら
お詫び申し上げると共に
何卒ご理解くださるよう
お願い申し上げます
ありがとうございました



龍しゃんコメありがちょ(;´Д`)σ)´ε`)
レオしゃんもコメありがちょ(;´Д`)σ)´ε`)
びーしゃん協力ありがちょ(;´Д`)σ)´ε`)
bluesoyazyしゃんリンクありがちょ(;´Д`)σ)´ε`)
(笑)

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REINCARNATION



街角の 雑踏の中で

あなたを 見つけるの

今と 同じ姿で

そして

あたりまえのように 家に帰って

二人で 暮らすの

約束事なの


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軌跡



相変わらず
鳶が空を旋回している

駐車場は更に広げられ全て有料化された

ここへ来る途中の街並みも
あったものが無くなり
無かったものが建っていて

ハッとし
変わったなぁと
寂しさに
ポツリとこぼす

変わらないものは

見上げる空と
どこまでも遠い海


私はまた
彼女の町を訪れ

彼女と同じ空気を吸い込み

彼女が目にする街並みや景色を愛で

彼女との足跡を辿り

彼女と同じ空間に包まれて

意識の中で

彼女と共に時を過ごす

私の胸いっぱいに溢れて

零れ落ちる彼女を解き放し

拾い集めては

家路につく


鳴るはずのない

壊れた携帯を

開き見つめていると

今にも

メールが届くようだ…


今 どこ


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あなたの夢ばかり見てるの

昨日も一昨日も

毎日のように



………………


彼女はホテルのベッドに眠っていた

きちんと仰向けに全裸で眠っていた

まるで標本のようだった

彼女は綺麗だった

白いシーツに溶け込んでしまいそうなくらい

白かった

彼女の周りには赤い花が散らばっていた

触れてはいけない

そう想った

とてもとても

綺麗だった

私は安堵し

彼女を置いて

ドアを開けた




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一緒



私は彼女を感覚の中で感じ取り
満たされる

彼女は既に膨らんだ私に手をあてがう

私は彼女の胸元に唇をあてがう

私を握る温かい手

まくしあげられた衣服

彼女の張り詰めた尖首

優しく握ったまま動く手

転がしてゆく舌先

吐息と共につながってゆく

深く深くつながってゆく

一緒に昇り詰めようと

息を殺しその時を堪える

小さな声ともならない

吐息を合図に

しっかりと抱きしめたまま

一緒に果てる

そっと唇を重ねる

背中をさする

頬ずり吐息を漏らす

ねぇ…

ん…

好き…

唇を重ねる

愛しい

私を受け入れてくれる
この全てが愛しい

誰にも譲れない
たった一つの宝物

望むのは

豊かな生活より
貧しくとも
あなたのいる生活

脅かす全てに抗っても
あなたといる生活

全ての関係を絶っても
あなたのいる生活


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時空



夕食を終え
彼女は食器を洗っている

その後姿をずっと見ていた

不思議と見ていて飽きない
それどころか
余計に愛しさが増してゆく

滔々と湧いて絶えることがない

今すぐにでも抱きしめてやりたい気持ちに駆られる

この屋根の下
同じ空間で
同じ時間の流れを感じている

彼女の背中に
ずっとこのままであってほしいと願った
ずっとそばにいて
見守っていたいと願った


洗い物を済ませると
彼女はまるで私の心が見えたようにねだる


ねぇ
抱っこして

彼女はあぐらをかいた私の上に
跨り抱きついてきた

優しくそっと腕を回し
抱きしめ
私は彼女を感じとっていた

その静かでしんしんと流れゆく時

安らぎに満ち溢れて
揺るぎない確かさがここにある

ねぇ…



歳を重ねてもこんなふうにしてたら
変かな…

全然変じゃないよ
むしろ
こうでありたいよ

私の友達は
結婚してある程度の年数が経ったら
そんなのはおかしいっていうの…


長い将来の先を見て
互いに想い焦がれていたはずの男女が
同じ屋根の下で
同じ空間
同じ時を過ごし
抱擁を忘れ
唇を重ねることさえ記憶の中にしまい込んだなら
そのほうがおかしくはないだろうか



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真実



風呂から上がった私は
卓袱台の前であぐらをかいていた

彼女は台所に立ち
用意していた夕飯を温め直している

はい
おつかれさま

グラスを差し出し
ビールを注ごうと傾ける

飲んでて

私は一瞬躊躇した

口に出して言っていいものなのか

それが彼女の負担になってしまわないか

悲しませてしまわないか

なんの変哲もない言葉は
時に深い意味を持ち
重く刻まれてしまう

息を呑んで留めた言葉を
冗談めかして言った

こういうのいいなぁって

うん

微笑む彼女

私はグラスを口に運び一気に飲み干した
思春期に感じたことのある青い匂いと一緒に

もし
彼女が今
悲しんでいたり
苦しんでいたり
傷ついていたり
するのなら

それはきっと
私のせいなのだ

一切のそれから守ってやろうと想っていた筈なのに

深く愛してしまった
私のせいなのだ

今 私は
彼女のそれを知る術がない

誰かに見てきてもらえたらと
アテもない馬鹿な考えが頭の中をよぎる

ただ
彼女は言う

こうして二人が過ごしている
今が 真実なの


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滔々と



濡れ雪が背後に流れてゆくのを
車窓から眺めながら
大船 鎌倉 葉山の町並を走り抜けてゆく

雪景色の向こうに彼女への想いを馳せ
あれやこれやと夕餉の話題を掻き集める
ハンドルは八の字に握り
ここで事故ったらいけないと戒めながらも
アクセルは踏み込む
そんな自分に苦笑いしながら彼女の家に着いた

呼び鈴を鳴らし玄関に立ち
迎える彼女を見るなり
この時までの彼女に向けた
祈りとも願いともいえる様々な想いが
胸を圧迫し喉元に凝縮される

私は彼女を抱きしめた

唇を合わせると
その柔らかで温かな感触が
冷え切った唇に浸透してくるのが心地いい

背中に回した腕は彼女を撫で
腰に回した腕は彼女を離さない

唇を離し視線をあわす

零れた満面の笑み

より強く抱きしめる

彼女の
姿態
匂い
温もり
息づかい

全てを吸い込み
愛しさは全身を貫き
恍惚とした時に包まれる

喉元に凝縮されたものを
堰を切ったように大きく吐き出す

彼女は顔を胸に押し当てたまま
その身をあずけている

張り詰めていた想いが徐々に
滔々と漂い空間に溶け込み
柔らかく和んでゆく

ただいま

おかえりなさい

ご飯温め直すから
お風呂入ってて

彼女は浴室をシャワーで暖め
冷えた私を浴室に招く


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置言葉



空を見上げる時

彼女の住む町の方角を探す私がいる

乾いた青の空の真下に
家事や雑事に一生懸命の彼女を想う

胸いっぱいに込み上げてくるものを

大きく息を吸い
鎮めて吐き出す

意識は彼女の元に飛び
彼女の姿を捉える

静かにしっかりと

またな…
がんばろうな

と置いてくる

……………

車を停め手持ち無沙汰に
煙草に火を点けた

まだ
人は一人も見当たらない

鎌倉市と横浜市の境にある
小雀という町に仕事できていた

ここから彼女の住む町までは目と鼻の先だった

私はこの町から彼女に逢いに行った
あの日を想い出していた


寒い一日で午後からは雪がちらつき始めた

雪だ
見せてあげたいな
青白く光る雪
今日は定時で終わりそうだ
早く帰って風呂に浸からなきゃ


作業を進め気がつくと
辺りは真っ白になっていた
指先がかじかんで思ったように動かない
髪の毛から融けた雪が水滴になって落ちる

帰りがやばいだろうと定時を待たずに
早々と後片付けに入った

よかったら
うちにおいでよ
お風呂沸かしておくから
晩御飯も食べてって


ありがたかった
心からありがたいと想った
待つ人がいる
労をねぎらってくれる人がいる

こんな日だからだろうか
目頭が熱くなった

ありがとう
今から向かう




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2011年05月11日(水)
衝動



ベッドの上

締め付ける

肩からまっすぐに伸びた日本の腕がある

親指は喉仏を押さえつけ

四本の指は首をぐるりと巻きつける

その哀しくとも美しい表情


今の今まで求め合っていた

彼女は私に跨り

つながったまま

静かにぽつりと口を開いた


ねぇ…
私だけでいて

どうしたら伝わる?

首…
締めていい?

いいよ


彼女が本気であることはわかっていた

表情は一変した

私は般若を見た

喉仏を押さえられ
咳き込みそうになる

目に圧迫感を感じる

頭がジンジンと痺れ
血液の脈打つのを覚える

自分だけのものにしたい
離れたくない

その小さな胸に溢れんばかりの想いを湛え
懸命にこらえていた彼女
私は彼女の衝動が理解できた

抵抗しない私に
指を外し覆い被さる

無言のままの彼女

身体が震えている

背中に腕を回し
さする


一思いにやってくれなきゃ
苦しいだろ

できないよ!!

……うん
わかってる


ひょっとしたら
こんな時もくるのだろうと
彼女は彼女でお互いに感じていたのだ
そしてそれはお互いを試したのではなかった


刺違える覚悟ができて
なにもかも捧げる覚悟がなければ
かけがえのない
たいせつなものなど
手に入らないだろう



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メール
彼女と一緒の時を過ごし
陽が傾く頃
その日の別れを意識する

帰り着く家が同じだったらと
何度想っただろう

別れと再会のくちづけを交わし
それぞれの車に乗り込む

ルームミラーから何度も私を覗く彼女

いよいよ彼女の家も近くなり
やるせなさが込み上げてくる

分岐点の交差点
彼女の車が左ウインカーを点滅させる
青信号
彼女が運転席と助手席の間から手を振る
ルームミラーの中の笑顔の彼女

その場から離れ難くアクセルを踏み込めない
後ろ髪を引かれる想いのまま
なだらかなカーブを走る

あの日もいつものように市立病院の駐車場から
夕食の買出しをして帰る彼女の車の後ろをついていった…

いよいよスーパーの駐車場に入ってゆく彼女を
見送りながら
いつもと同じ想いを抱きながら帰路を走った
いつも笑顔の彼女はこんな私の想いなど
知る由もないだろうと思った


今どの辺?

高速入り口近く

そう…
気をつけてね

どうした?

なんだか泣けてきちゃった…

もどろうか?

いいの
気をつけて帰ってね

大丈夫か?

うん…
もういい
文字が見えないから…



私は満面の笑顔の向こうに
同じ想いをした彼女がいることを
知った





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西陽



突然
胸が空っぽになるのは
彼女を失ってから

たいせつな人の命が尽きた時のように
音が無くなる
味わったことのない静寂が耳の奥から離れない

モノトーンの残影が
まぶたの裏に焼き付いて

否定は空間に吸い込まれ
私を置き去りにしてゆく

空腹にも似たこの虚無感は
あらゆる娯楽さえも無意味なものに感じさせ
活路を見出すことすら考え及ばない


一度…
一度でいい

遠くからでいい
穏やかな笑顔を見たいと切望する

それが叶ったとて
何をするでもない

私は彼女の名前を口にするのだろう

ありったけの声で

その声が届かず気づかなくとも
そこに笑顔があるなら

私は駆け寄って
この胸に抱きしめたい衝動を
身を掻き斬る想いで抑え

その場に泣き崩れてしまうのだろう

あの海に沈みゆく西陽のように

そこにあって捕まえることのできないように

ただ泣き崩れてしまうのだろう

その狭間にあるものの深さを思い知り

一歩も動けずにいるのだろう

その時零れ落ちる涙が

この身を溶かしてしまえばいいのに…

消えてなくなればいいのに…


私は確かに

愛した


そして
一度だけ
彼女は口にした


愛してる


どれだけ重い言葉だったろう…




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ミネラルウォーター

カウントダウン前

お互いの腕をまわし
抱きしめ
くちづける

唇から溶けてしまいそうになる

ちろちろと
愛らしい舌先が触れる

柔らかで温かくて
優しくて

想いの昂ぶりに胸切なく強く吸い
捕まえきれない何かを求め合う

どれくらいの時間そうしていたのか
時間を確認するととっくに新年は明けていた


彼女のそれに腿を押し当てると
愛しさを通り越し
かわいそうなほどしっとり濡れて
まるで泣いているようで…

私は押し当てた腿で彼女のそれを開き
私を挿し入れた

抱きしめ
くちづけたまま
なんの抵抗も案内もなく

ゆっくりと
どこまでもどこまでも
吸い込まれ
行き着く先のないように入ってゆく

動くことはせず
抱きしめ
くちづけたまま

まもなく
波打たせ
彼女は果てた…


上体を起こし

枕元のミネラルウォーターを口に含み

私の喉に流し込む

とても自然で素直で温かく強いつながりがある

潤んだ瞳が私を見つめ

優しく微笑んでいた
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ロケット


私との証を
その肉体に刻んだ彼女は
ベッドの上で私を噛む

どうして…
普通逃げちゃうのに
痛くないの?

彼女がしたように
私もこの肉体に彼女を残したかった

そしてそれは彼女を想う切なさや想いの深さの表れだった

彼女を想うことのそれに比べれば
肉を噛み千切られる痛みなど
たわいないもののように思えた

またそうすることによって
彼女に対する私の想いがどれだけかを伝えたかったし
知ってもらいたかった

彼女の傍らに居て
決して裏切ることのない形として

私はためらいなく彼女の前に
この身を投げ出す

どこか異国の女優がロケットに
自分と彼氏の血を入れて持ち歩いているという話を
彼女から聞いた

彼女はそれと同じようなものを欲しがっていた


あなたと私の血が
一緒にロケットの中で混じりあってるの


気にしながら手頃なロケットを探してみたりはしたものの
見つからず
それは実現できなかった


一筋の紫煙の向こうから
おねだりでもするような顔で
返事を待つ彼女


煙草
やめようかな…

一緒にやめようよ

一緒ならやめれそうな気がする

…………………

あのね
年と年の間にキスすると
ずっと一緒にいれるんだよ


どこで聞いてきたのか
ほんとか嘘か

聞き返すことも
疑うこともしなかった

彼女がそう想うなら
それでいい

私はまっすぐに彼女を受け入れ
まっすぐに応えればよかった




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2011年05月10日(火)
ピアス



車の中
彼女はクロスインクロスを取り出す

あなたにつけてもらいたいの…

彼女の首に腕を回し留め金具をあわせた


…………


2004年12月24日

彼女と私は横須賀のはずれにある
ラブホテルの一室にいた

ケンタッキーフライドチキンと
コンビにで買ったショートケーキ
それと彼女の作ってくれた五目いなりずしで
ささやかだがクリスマスの夜を共に過ごした

彼女はバッグから紙袋を取り出した


ねぇ
開けて欲しいの

ん?

ピアスの穴
開けて欲しいの


紙袋から取り出した道具を私に持たせ

思い切ってやってくれ
失敗すると痛いのだと言う

その真剣ともいえる表情と
言い回し方が滑稽で
吹き出しそうになるのをこらえていると


もし失敗しても
傷は残るの…

穴が塞がって
そこだけ堅くなるの

あなたが開けてくれた穴は
たとえピアスが通らなくても
ちゃんと残るの…


私は
彼女の左耳に穴を開けた


彼女はきっと

鏡を前に

ピアスを通すたび

しこりに指をあて

遠いあの夜と

過ぎ去った日々を思い出すのだろう


私との証を

なによりも確かな

彼女の望んだ

彼女なりの

彼女らしい

やりかたで


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回想

彼女を想う時

何もかもが満たされ

彼女との永遠を祈る時を過ごす

静けさの中に身を置き

意識は彼女の元へ飛ぶ

私は彼女の一挙手一投足を見ている

過去であり現在であり未来である


わたしが
おばあちゃん
あなたが
おじいちゃん
その時
一緒になれそうな気がする…

遠くを見る目で
ぽとりと言う

それでもいいと思った


あのさ…
この先どんなにおまえが変わり果てても
事故や病気でその姿形が変わっても
俺はおまえを
今と同じように
抱いて
くちづけるよ
何一つ変わらない



窓の外

街灯の無い

雪の深く降り積もった夜に

月明かりに照らされ

青白く蛍が舞う



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夢見て


漆黒の闇夜の何かに問いかけても
鎮座し手を合わせ聖なるものに呼びかけても
頭を抱え苦悩の中で自問しても
何も返事は返ってこなかった

ただ
私を受け入れうごめく彼女の反応と
恍惚とした彼女の反応を見て

この先誰かに抱かれようとも
私だけでいって欲しいと思った

私に抱かれた時はしたたるほどに濡れ
溢れていて欲しいと思った

切なく疼き敏感な時は貪るように求め
淫らに」なって欲しいと思った

そして私はそれに応える

彼女の中に私の全てを注ぎ込む

その瞬間を幾度もこらえ
呼吸も絶え絶えに
心臓の高鳴りが鼓膜を圧迫し
頭の中が真っ白になり

いよいよ果てる時

私の生命を担う細胞の一つ一つが震えるほどの悦びを感じながら
脚の先から尾てい骨を走り
背骨を駆け抜け魂を伴わせて

彼女の奥の奥に刻み込むように擦り付けて…

私はそのように思うことが
淫らだとか卑猥だとかいうより
むしろ自然であり当たり前のように感じていた

それが彼女に対する口から出る言葉の裏切ることのない
嘘や偽りのない
私から彼女への想いの証でもあった

そして彼女もそれを望んだ

何の悪戯であろうと
何のためであろうと
応えが返ってこようがきまいが

それだけは確かであり真実だった



遠く黄昏て
辺りが暮れていることに気づくと
一層心細く悲しみが込み上げてくる

周りの窓からは温かい明かりが漏れ
夕餉の団欒の時がゆっくり流れているのだろうと思う

未だ想いの届けられぬ人は
彷徨する心のまま
部屋の明かりを点けることさえ忘れ
ぼーっとした
暗闇に溶け込んでゆくのだろう

何も見えないその空間に意識だけがはっきりと存在し
胸の張り裂けるほどの切ない苦しさに
流れゆく時を涙に変えてゆく

どうにもならないのだけれど
どうにかしたくて…

誰かに聞いて欲しいのだけれど
誰にも言えず

その人との温かい空間と時の流れを夢見ながら

ただ

好き

でいいのに…




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2011年05月09日(月)
しなくていい
このままでいい
彼女を感じてさえいれば

そばにいてずっと見ていられるのなら

残りの半生を彼女と共に生きてゆけるなら

私の全てを犠牲にしてよかった

静かに暮らし
彼女の最後を笑顔で飾れれば

一人にしては寂しいだろうから
彼女を見送ってから逝けるなら

思い出の中に身をおいて
目の前の現実を受け入れられずに
彼女と過ごした空間に包まれて
魂の抜け殻が
時をいたずらに彷徨するのは
寂しすぎるから

すぐにあとを追って逝く

………

そのとき私は見た
彼女の抱える煩雑さや喧騒のような重荷から抜け出し
安らいでいて慈愛に満ちた
穏やかな彼女の
どこまでもどこまでも優しい顔を…

遠く遠く
わからないまま
夢見て欲していたものが


目の前にあった

抱きしめた

そのぬくもりを感じた途端
愛しさが込み上げてきた

彼女はズボンの上から私に触れて優しく撫でた

とても優しく包み込んだ

抱きしめた腕に力が入る

きて…

彼女はパジャマのまま車に乗り込んでいた
指を滑り込ませると
彼女は溢れていた

私が彼女の中に入ると
その溶けてしまいそうな感覚に
深いため息にも似た声が
お互いの口からこぼれた

私と彼女は
その感覚を確かめるように
じっとしていた

つながったまま
くちづけあった
つややかで潤い
柔らかで優しい
くちづけを…

何もかも溶けてしまいそうだった

窓は曇り
車体が揺れる

犬と散歩にやってきた人の気配

かまわない
止めないで…

果てた

彼女の身体は時折ビクンと波打った

余韻の中に漂い
流されているように

肌を撫でる果てた時のまま指を絡めている

帰らなきゃ…
パジャマのままだもの




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2011年05月08日(日)
【痴人の愛】



私の誕生日が近づいた頃
一冊の本をあげるとメールが届いた

私は彼女と付き合っていく中で
中学生の頃に読んだ一つの小説を思い出していた

あのさ本って言えばさ
【痴人の愛】って知ってる?

えっ!
それあげようと思ってたの
読んだの?

ああ…

普通読まないでしょ

俺の周りじゃ居ない

私の周りもよ


おそらく彼女は私と同じことを感じて
その小説を思い出していたに違いない

……………


逢いたいの
来て


私は彼女からのメールを見るなり
家を飛び出した
彼女の今までとは明らかに違うメールだと感じ取った

何を話したのか覚えていない
幹線道路から離れた入り江に車を停めていた
地元の漁師が夫婦で船を出し
海中を覗いていた
陽は水平線から少し浮いていて
朝の陽光が車内を茜に染めていた
海は凪いで静かだった

私は彼女からのくちづけを拒んでいた
それが最後になると思った
どうしてかと聞かれるが
言葉が見つからない
終わりたくないと言えば
それでよかった
ただそれはやはり終わりを意味すると感じていた
喉元に重い何かがつっかえている
それが幾重にも幾重にも込み上げて止まらない
拒むのが精一杯だった

初めてね
拒んだの…

呼吸が止まった
終わったなと思った
体中に見つからぬ言葉が飽和した
体が宙に浮いたように感じた

最後…なんだろ

吐く息と一緒に重い声

抱きついてきた

もういいの
して…

………

お願い…

………



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2011年05月07日(土)
虚空
彼女の家から離れた角に
車を停める

彼女の家の前

ポストに入れた

車に戻る

シートに腰を落とした

終わった…

急に涙溢れて止まらない

心臓が止まりそうだった

まだ呑みこめない

どうして…

喉元が熱い

ドアをノックする音

パジャマ姿の彼女がいた

彼女の顔も見ず車を走らせた

cross in cross

返されたくなかった

彼女に始末して欲しかった

何もかも空っぽだった

宙に浮いて

真っ白だった

全てが無機質だった

私が存在しなかった

彼女からのメールと
呼出し音が鳴り響く

逃げるように車を走らせる

どこをどう走り
どこで停車し
朝が訪れているのかを知らない

早朝 家にいた

今どこ?

もう家に着いたの?

どうして返信してくれないの?

何か言って!

返信して!


時の刻みを感じた

彼女からの着信も無くなった

携帯電話の着信履歴を眺めていた

するべきことはした

留めては零れる涙が
また涙を誘う

ただただ
眺めていた

見えもしないのに
スクロールしながら
眺めていた

家の中が白くなりだしたことに
気が付く

天井を見上げ
大きく息を吐き出す

幾らか落ち着きを取り戻した

何か…
何かしよう
どうにもならないもの…
何を恨む?
何に問えばいい?
何を問う?
何にすがる?
どうにもならないだろ…
やることはやったじゃないか
いったいどうしろって…

虚空…


着信音…

彼女からのメールが入った



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cross in cross


やっと
手に入れた
cross in cross

誕生日には間に合わなかった

明日逢う約束だった

そして渡すつもりだった


彼女からの予期せぬメール

深夜
家を飛び出した

今から行く

携帯が車内に鳴り響く

来ないで

携帯が鳴る

幾度も幾度も

切っても切っても

携帯が鳴る

私が持ってても意味が無い

やっと手に入れた
cross in cross

携帯が鳴る

外のcrossは私
内のcrossは彼女

お願い電話に出て

最後でも

これだけは
届けたかった

携帯が鳴る

来ても逢わないし受け取らない

かまわない
ポストに入れて帰る
あとは好きにしていい


なぜ…
何が何だかわからない

突然
もう逢わないって…

電話に出て

東名川崎から
横浜新道に入り
横浜横須賀を飛ばす

周りが見えていなかった

何度も何度も
痛みが喉元に込み上げてくる

飛ばしていた

このまま命尽きてもいい



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月光



大人でいるって
どういうことですか

愛する想いに
大人と子供の違いがありますか

別れの時の

身を切られるような傷みに
耐えて分別よくすることが
大人ですか

息苦しい悲しみに
涙をこらえて
幸せを願うのが
大人ですか

多くの思い出の一つとして
記憶の中にしまい込んでしまうのが
大人ですか

そういうことができて
予め予想し
傷つくのを和らげるのが
大人ですか

どうにも変えがたい状況に
自分を納得させてしまうのが
大人ですか

………

夜明けの月光は
あんなにも
神秘的だったんだなぁ…



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2011年05月06日(金)
安堵


ねぇ…

瞳が強く見つめる
小刻みに震える彼女

一緒に…

愛しくて
たまらなくて
胸にあついものがこみあげ
背中に回した腕を
力いっぱい
抱きしめて
胸元を吸う

衝いた

抑えなくていい
つき抜けるくらいに奥まで

…っ

彼女がびくんと弾けた
痺れるような愛しさが
彼女の中にほとばしった
幾度も幾度も…

震える彼女

つながったまま
抱きしめ
彼女の背中をさする




満天の星空
辺りは静まり返って
聞こえるのは
彼女の息吹

私を受け入れ
私を求め
私で果て
私に抱きついている彼女


この深い安堵の中で
なぜ泣けてくるんだろう




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星空



満天の星空
波の音だけが車内に届く
海は黒くたゆたう
夏には海の家の立ち並ぶ駐車場
他に車が三台

抱っこしよ…

彼女の指がベルトを外し
ファスナーを下ろす

私を指で包み込み優しく撫でる
含む

温もりが私いっぱいに広がる

ゆっくり深く含んでゆく

跨る

私を握る

彼女にあてがう

僅かに沈める

吐息

確かめるように
ゆっくり
そっと
沈めてゆく

彼女が震える
吐息にも声にもならない

ゆっくり動きだす

膨らみに顔を押し当てる
その匂いの安堵感

街角でハッとする時がある
彼女の匂い

胸いっぱいに何度となく吸い込む

Tシャツを捲りあげ
膨らみを包む
突起を摘む
挟む
転がし吸う

徐々に激しく動く

私に温かく伝ってくる感触を覚える
彼女が溢れる

腕が首に巻きつく
くちづける





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花火

浜辺から離れた頃には対向車のヘッドライトが眩しかった

道路もいつもより混雑してきた

この町に自衛隊主催の花火が上がる

私は彼女に教えてもらった抜け道を走り
一年前に一緒に花火を見た小高い墓苑へ向かった



あの日
私は彼女と別れ彼女の瞳にも映るであろう
花火を見て帰ることにした

上がったね

今どこ?

家の近く

…待って

どうした?

そこへ行くから…


数分後彼女は来た

お醤油買ってくるって出てきちゃった

その時の
彼女の花火に照らされた
今にもその瞳から涙の零れ落ちそうな笑顔が
私の脳裏に刻まれたままだ

道端に車を停め
車窓から花火を見る
花火の上がるたびに破裂音が胸に響く

とっさに言い訳を考え
無理して来てくれたのだ

愛しさと
切なさと
優しさと

私は花火を見上げる彼女を見ていた

このまま
ずっとこのままいれないものか

そう思った時

時間が止まればいい…

ポツリと彼女の口から零れた



あの時なぜだろう
ハッとした驚きと共に
抱きしめてあげたい気持ちに駆られたのだけれど
その横顔がとても可憐で純粋で
抱いてしまうとなにかが堰を切ったように流れてゆくような
それでいて安易に止められてその場しのぎのように思えて
腕を伸ばせなかった

ただ
私にとってかけがえのない
たいせつな人なのだと
実感していた


今こうしていると
彼女が坂道を登ってきそうで
胸に熱いものが込み上げてくる

体を揺らすような音と共に
花火は上がった

滲む花火と
助手席の彼女の残影と

淡い思いを寄せ
携帯を手にとる

彼女とのメール
スケジュール
写メがぎっしり詰まった
スクロールの利かない携帯電話

新しいものに替えたがアドレスは替えていない

鳴れよ…

さっきまで居た海辺から
波の音がするような気がした

目を閉じた
シートの背もたれを倒し
腕を瞼に押し当てた


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幻影
彼女の元へ何度走ったのだろう…

尻手黒川を横切り
あざみ野から江田を抜け
新横浜から第二環状

屏風ヶ浦を右折
青砥
富岡町
金沢文庫
追浜
浜見台
船越町

この辺りから隧道をくぐる

船越隧道
田浦
吾妻隧道
長浦隧道
吉浦隧道
吉倉公園
新逸見隧道
汀橋

坂を下ると横須賀の町が目に入ってくる

早朝は異国の男女が目につく

飲み明かしたのだろう
男の足元が頼りない
鼻立ちのスラリとした女性があやすように
男を抱いている

休日の昼は自衛隊の制服を身につけた
男女のグループが目につく
それは男性のグループと
女性のグループと
はっきり分かれている

横須賀中央駅を過ぎ

衣笠


裏道を覚えるほど通った

横須賀中央駅を通り過ぎ坂道を登りきると
昔ながらの店が立ち並ぶ
アーケードこそ施してはあるが派手さはない
私は郷里の商店街を思い出し
且つ彼女の幻影をその商店街に見る

車窓から過ぎゆく光景は
徐々に柔らかなフィルターに包まれ
知るはずの無い彼女の学生時代に
フィードバックする

制服姿の学友と肩を並べ
人目を憚ることなく大きな笑い声を響かせ
歩いている彼女
じゃれあいふざけあって通りゆく彼女

私もその話題の中にあって
一緒の時を過ごしたいと感じる

あの思春期特有の胸のあたりから鼻の奥へ突き抜ける
青い鈍痛に似た想いを感じながら
一緒にいたいと感じる
遠くから眺め包んでやりたいと感じる

私の周りは安らぎに満ち
優しさと愛しさに溢れ
恍惚として感覚を失う

現実と虚構の境の狭間で
彼女のその幻影に思わず声をかけそうになった


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過去も未来も



思う時がある

思い出にしてしまったら
終わりを認めることになるような気がして

彼女に対しての想いや
彼女が私に傾けた想い

彼女に対して裏切るような気もするから

そんな苦しみや切なさよりは
記憶や追憶ではなく
今なお彼女を実感し
相対して時を刻もうと

二度とこの腕に抱くことの無いにせよ
そのとびっきりの笑顔が見れないにせよ
やがて老い
その命が尽きる時こそ
私の意識だけが晒され
間違いなく私の存在の全てが
過去も未来も彼女のためだけにあるのかを
知りたいから


ねぇ…

…ん?

あなたが死んだら
骨をちょうだい…



食べるから…


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愁陽



海辺で見るこの陽と似た陽を何度となく見てきた

幼い頃の記憶が蘇る

私は母に連れられ従姉妹達と母方の郷里で遊んでいた
母の実家から十五分ほど歩いたところに小学校がある
その校庭の向こうに大和沢川という川が流れていて
川遊びをしていた
川の向こうはすぐ山だった
対岸に隣村へ繋がる一本の道がある
その途中に実家の所有する小さな林檎畑があった

母は実家の手伝いで幼い私を連れ
林檎畑に向かうその道の途中にある
山から湧き出る清水を蕗の葉を器用に織り器を拵えて掬い
私の口に運び喉の渇きを潤してくれたものだった
昼時には枝を折り皮を剥き箸にして弁当を食べたりもした

その一本道もやがて陽が傾きみんな帰りだした
ふと顔をあげ山肌を見上げてゆくと
山の上に陽が浮かんでいる

山々は真っ赤に染まり
私はなんともいえないその光景に見とれてしまった
いつのまにか胸がいっぱいになり涙が溢れてきた
懐かしいような不思議な想いに駆られて
一本道を歩き出していた

温かいなにか
懐かしいなにかを
その山の向こうに感じ
そしてそれは待っているような気がした

どのくらいの時間だったか
何歩進んだのか
遠くから従姉妹の呼ぶ声が耳に入った
私は我に返った
私の周りを木々が囲み
すっかり暗くなっているのが目に飛び込んできた
私は急に怖くなり
従姉妹達の居る方を振り返ると
一目散にその場を離れた

そして今私はこの海辺を離れる
今少し見ていたら何か得られるような気がしたが

名残惜しい想いを胸の隅に追いやりながら



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2011年05月05日(木)
信じてる

神奈川県三浦市の海岸で
異国の女性の死体が見つかったというニュースを
彼女と聞いていた

彼女が言う

あなたが
たとえ
人殺しでも
好きでいられる
あなたを
信じてる


今までの社会的な一切の地位や名誉
信頼関係さえも失ってよかった

親兄弟の縁や親族関係も断ち切っていいと考えた
もちろん財産などあろうはずもない
あったとしてもくれてやっていい

私にとって彼女はそれらと比べることなどできないものだった
そしてまた
そうすることによって近親者や周囲の
内外からの抑圧があっても
彼女には指一本たりとも触れさせず守ってゆく覚悟でいた

彼女の顔を曇らせる全ての
あらゆるものに立ち向かってゆく覚悟ができていた
なにも怖くなかった

ただ一つだけ私にとって
彼女を失うことだけが怖かった
身も心も
全身全霊で彼女を愛している自分を知り
彼女のことを考え想い意識し
見守り抱き温もりを感じ
目や鼻や耳に直接入ってくる空間に存在しているものとは別の
違う空間の感覚の中で彼女を愛していることが
私が生きていると感じ
生きている為の意味なのだと知った

彼女は紛れもない
私自身だった


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夕暮れ
余韻の残る枕元で
私と彼女は訥々と寝物語を話した
身近で現実味を帯びて
簡単に手にできそうだった


夕暮れ時にね
仕事帰りの俺と
夕食の買出しにきた気味と
お互い遠くから見つけて
歩み寄っていくんだ

うん…

どちらからともなく手を握って
にぎやかな商店街へ向かうんだ

顔見知りの奥さんや子供たち
おじいちゃんやおばあちゃんに
声かけながらかけられながらね

そしてね
ひいきの八百屋さんや
魚屋さん肉やさんを
今日は何を食べようかって
相談しながらね廻るんだ

それでね
威勢のいいお店の
おじさんやおばさんにね
からかわれるんだ

よっ!ご両人
いっつもあっちぃねー
今日はなんだい?ん?
決まってねーのかいっ
よっしゃ
白菜安くしとくからなべにしなっ!
よっしゃ決まりだ


なんてね

(笑)
じゃあ
わたし 値切るわ

んでね
八百屋のおじさんとおばさんが言うんだ


しょーがねぇなぁ
負けたよっ
いっつもこれだぁ
奥さん可愛い顔して
しっかりしてっからなぁ
椎茸持ってけ!

あんた!
きれいな人にゃすぐこれだ
晩酌抜きだかんね!


とか言って
周りの人達も見て笑ってるんだ

(笑)

いつもありがとう

毎度おおきにぃ


ってね
お店のおじさんもおばさんも
にこにこしながら
見送ってくれるんだ
買出しも終わって
茜に染まった家路を二人
歩いてくんだ

夕暮れの商店街練り歩きね
ぽつりと彼女が言う

腕枕から
まっすぐに私を見つめる
顔いっぱいの笑顔の彼女がいた…



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2011年05月04日(水)
ただ…
海に消え入りそうな西陽

届くはずのない西陽を眺めている

手を伸ばせばすぐそこにあって
つかめるような錯覚を覚え
腕が動きだしそうになる

遠くの張り出した沿岸
凪いでいる静かな海
茜に染まりゆくうっすらと青い空
そらに嵌め込んだような西陽

一つ一つがはっきりと目に飛び込んでくる

その存在感に圧倒され立ち尽くしている

時が止まった

そう感じた

熱いものが溢れ頬を滑り落ちてゆく

逢いたい時には
逢いたいと伝え

欲しい時には
欲しいと伝え

触れたい時には
それに触れ

愛しさに
くちびるをあてがい

求めては応えて
瞳の奥で信じあい

疑うことも
嘘もなく

駆け引きに
自分を偽ることもない

ありのままを
受け入れて

ただひたすら
まっすぐに…


…愛してるって

言わないで

好きでいい

ただ好きでいいの…



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2011年05月02日(月)
やすらぎ
あなたを感じていたいから

ずっとこのままでいたいから

あなたも まだ…

不安でしかたないから

せつなくてしかたないから

はちきれそう…


押し寄せる波に
のみこまれ

きつく きつく
抱きしめて

幾度も 幾度も
こらえた

やがて潮が満ち

互いの瞳を見つめ

逸らすことをせず

一緒に果て

尚つながったまま

見つめていた



ねぇ…

私 今

世界中で一番

愛されてると思う



まっすぐな

彼女の瞳から

大粒の涙が

溢れた

とても とても

静かに

溢れていた





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流れゆく時



彼女に鼻先を近づける

深く吸う

かすかな彼女の匂い

更に深く吸う

光る彼女
滲み出る想い

唇をあてがう
吐息


花芯に触れる


波打つ

吸う 掬いあげる
堅くなる

優しく だいじに
包む

浮き上がる


手のひらを探す

握りしめる

優しく だいじに
掬いあげる

濡れそぼる

堅くなる突起


宙に浮く

滑る唇
彷徨う声

更に浮く
包み込む

がくんと落ちる



そっと抱きしめ 唇を重ねる

たゆたう時の流れ

時折弾ける体

見つめる

紅潮した頬

うつろに濡れた瞳

流れゆく時を感じる

唇が動いた

好き

交わす笑み
愛しくて

きて

瞳をそらさず まっすぐに

挿し入れてゆく




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風と共に


自衛隊の駐屯地を過ぎ
ラブホテルのある交差点を右に
その先の細い路地を入ればまもなく海が開ける

何度となく彼女と足を運んだ

車を停め浜辺に出た
煙草に日を点ける

波はどこまでも凪いでいて静かだった

かけがえのないもの
命さえ惜しいと思わないもの
彼女がそれだった
そばにいて見守っていたかった

限られた時間の中で
どんなおしゃべりや
浮ついた言葉より

肌を重ね見つめていたほうが嘘は無かった

もちろん嘘などあるはずも無い

砂地に立ち
瞼を閉じ
風を感じていた

頬を撫で
髪を梳き
耳を掠めてゆく

あらゆる一切の煩雑さから遮断された

あるのは風と意識
意識だけがはっきりと残って
風に流されていた

彼女を抱き
舞い上がり
どこまでも
このまま
消えてしまえないだろうか

意識だけが
風と共にあって
彼女の想いを抱きながら


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眠り


深く沈めた体を背もたれから起こし
車のキーを回す
彼女と行った浜辺へ向かう
ここから十分もかからない

駐車場を出て交差点を右へ南下する
市立病院を右手に見る

一度だけ彼女の診察に付き合ったことがある
彼女は一枚の紙を私に見せて笑った



そこには診察の日付と時間
都合の悪い場合は云々…
〇月〇日〇時頃
と書かれていた

彼女は【頃】が可笑しいのだと笑う
確かに普通なら書かない

精神的に負担をかけさせないようにするための
病院側の配慮なのだと言う

治療の経過は良く
たいして通う必要もないらしい

メールから始まり
打ち解けて一ヶ月後にはベッドを共にした
仕事を終え出張先の長野から走って
彼女の住む海辺の町に着いた時には
辺りには人影も無く市立病院の病室の窓から
カーテン越しに届く淡い明かりと
点々と灯る街灯だけでひっそりと静まり返り
心細いほどだった

とりあえず何か食べないかと提案したのだが
彼女はホテルへ行こうと言った
長い道のりを走った私への労わりからだと感じた

ホテルで軽く食事を済ませ
ベッドに入り互いに求め
体を横たえていつの間にか眠ってしまった

次の日の早朝
アラームが鳴り目を覚ますと
彼女は素っ頓狂な声を張り上げた

すごいよ!
眠れたんだよ私!
今まで眠れたこと無かったんだよ!
すごいよ奇跡だよ!

眠剤を服用しないと不安で眠れないのだと言う

それ以降
私と彼女は時間の取れる限り
一緒の時間を過ごした

昼夜を問わず求め
一つに溶けていた



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2011年05月01日(日)
繋がり



彼女と知り合った頃
私は長野に出張していた

十月から新しい年を迎えた二月半ばまで

彼女に会いたい一心で
片道300kmの道のりを走った

仕事が終わるとすぐ車に乗り込み
彼女の住む町へ向かった

その日の夜を共に過ごし
翌朝太陽の昇らぬうちに別れを惜しんだ

休日の前日の夜に
待ち合わせ場所にしていた私立病院の駐車場で
約束の時間まで車の中で一夜を過ごすことも少なくはなかった

冬は寒さに
夏は暑さに
何度となく目覚め
彼女の来るのを待った

そんな待ち時間でさえ愛しく思えた
彼女は私の中に居て
想いを巡らすほどにこの胸から溢れていた

まるでポケットの中に収まっていた小人が
次々と飛び出してゆくように
私の目の前で無邪気に微笑んでいる彼女がいっぱいだった

私は飛び出した彼女を全て拾い集め
帰路につくのだった

彼女は私だった

私そのものだった


ねぇ…

わたしの兄でいて

兄弟でいてほしい

兄弟だったら
いくらケンカしたって

別れることは無いでしょう?




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反応


シートに深く腰を落とす

背もたれを倒し空を見つめる

どこまでも遠かった

コバルトブルーの空はすぐそこにあるのだけれど
捕まえられなかった

彼女と出逢い
私は一切の他の女性に興味を示さなくなった

グラビアを飾る魅惑的な女性も
AV女優も
街角を通りゆくどんなに魅力的な女性にも
振り返ることすらなくなった

彼女だけで満たされていた

気がつくと彼女以外には役に立たなくなっていた

精神的に肉体的に全て彼女のものになっていた

私自身は彼女の電話の声に反応した

それどころか彼女のメールにさえも反応した

どうにかしたんだろうかと思うほどだった


なぁ…

なぁに

勃ってるよ

…え?

おまえの声に反応してさ…

………やぁだぁ

メールにも反応するんだぜ

ほんとにぃぃ

こんなの初めてだよ
変かなぁ…

変だよー

やっぱり?

…でも…うれしい


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淡青


淡い感覚が薄れてゆくと
フロントガラスの向こうに乾いた青空があった

煙草の火を消し瞼を閉じた

出逢ったことの意味を何度考えただろう
その都度自分に都合のいい言葉を探し
繋ぎ合わせ言い聞かせることしかできなかった

考えても問いかけても
その意味は出てこなかった
意味があるにせよ無いにせよ
今 こうして泣くことも彼女の元へ行くことさえもできずに
空っぽの無機質な自分がいて
それを見ている自分がいるだけだった

大きく呼吸を一つ

車を降りる
外気を味わいながら歩く
バス旋回場を左手に見やり
隣にあるグラウンドに足を運んだ

黒の革靴が小砂利を食い
ぎゅっぎゅっと踏みしめる

その感触と音が心地よかった

グラウンドでは小学生のサッカークラブが試合をしていた

わたしサッカーなんてだいっきらい
みんな急にサッカーサッカーって

凛としたその怒った顔を思い出し
吹いてしまった

愛しい…

彼女の何もかもが許せてしまうほど愛しかった

ボールの行方を追う子供達を眺め
ため息を一つグラウンドに落とし
車に戻った



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2011年04月30日(土)
追憶


フロントガラスに彼女を映し出し
あの頃を想う



彼女の車が幹線道路を折れ駐車場に向かってくるのを目で追う
徐行しながら私の車を探す
視線が合う
満面の笑顔で手を振る
空きスペースに車を停めた彼女は
照れ隠しに髪をかきあげ
俯きながら早足に近づいてくる
ドアを開け助手席に腰を下ろす

ごめんね  待った?

彼女の微香が車内に漂う

愛しい…

胸の底から込み上げる何かが
喉元につかえて声にならない

彼女を見つめる

やだぁ  そんなに見ないでよう

恥ずかしそうに私を睨む

お帰りなさい…

くちびるを重ねる

………っ

小さな声を一つ
体がぴくりと弾ける

微かに赤らんだ顔で見つめる

優しい…ね



出逢って間もない頃の彼女は気の昂ぶりから
激しく求めるようだった
それがいつしかお互いを確かめるように
柔らかく溶けるほど優しく
余韻の残る確かなくちづけをするようになった
くちびるを重ねるだけで満たされるようになっていた





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紫煙


待ち合わせ場所に使っていた市立病院の駐車場

拡張されすっかり変わってしまった

有料化されあの頃のように待つことはもうできない

駐車場の向こうには海

変わらないのは見上げる空

相変わらず鳶が空中を旋回し獲物を狙っていた

幹線道路脇のファミリーレストラン
向かいの変電所
バスの旋回場
隣のグラウンド

空中に円を描いていた鳶が一羽急降下した

地面を滑るように舞い降りる

獲物を捕獲したのだろう
変電所向こうの小高い山へ消えてゆく

煙草に火を点けた

紫煙が車の窓から吸い込まれてゆく



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意識


休日の早朝
湯船に身を沈める
瞼を閉じる
徐々に間隔の長くなる呼吸
余計なものの感覚が薄れてゆく
意識だけがそこにしっかりと残る
意識は浴室の壁をすり抜け
家の前の生い茂る竹林の緑を仰ぎ見る
と同時に浮遊した

一瞬にして町を見下ろし一点を捉え降下する
そして彼女の気配の前に立つ

汗ばむのを覚える
浴室を出て着替えを終え
まだ寝静まり空の白む前に家を出た
片道二時間の道のりを南へ車を走らせる

彼女の息吹に包まれていたいだけだった
彼女の生まれた町
彼女の育った町
彼女の生活する町

彼女が
その目で見て
耳で聞いて
肌で感じる町

彼女と同じように
その空間の漂いと時の流れに包まれ
彼女の息吹を感じていたいだけだった



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2011年04月29日(金)
あなたの町へ


あの空の向こう

海に消えゆく
真っ赤な陽の愁い


この海に入ろう

消え入る
あの陽を拾いに

深い淵に落ちた
その陽を抱え
この海を渡ろう

閃く一瞬の
燐寸の灯火さえ

その残影を
瞳に焼きつけて
消えるなら…

届けにゆこう

あの空の向こう

あなたの町へ





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