消費税増税の素案公表
昨年末に、政府は社会保障と税の一体改革素案をまとめました。その中で、消費税については2014年4月に8%、15 年10月に10%に引き上げることになっています。この決定にたいして、民主党内には増税反対勢力があり、野党は増税前に議会を解散して国民の信を問うべきだと主張していますので、この増税の実現には疑問符が付いています。
財政赤字はますます拡大
一方、12月24日に発表された平成24年度の予算案では、歳出額90兆円に対して課税収入等が46兆円で公債発行額が44兆円になっています。この時の基礎的財政収支は22兆円の赤字になっていますので、財政の安定にはほど遠い状態になっています。また、国と地方の債務残高は平成24年度末には937兆円(GDP比195%)の赤字に達する見込みで、この状況は、財政危機が表面化している欧州諸国の状態を遙かに越える危険な状況にあります。
それでも財政は破綻しないといわれている
このような状況でも日本国債の金利は1%台に収まっていますので、財政は安定しています。よく、日本国債は日本国内で消化されているので、発行残高が多くても大丈夫だという人がいます。たしかに、日本国民が税金を納める代わりに、それぞれの預貯金や年金積立金で国債が購入されている形になっていいますから、結果的に国の財政は国民の資産で支えていることになります。したがって、海外資産で財政が維持されているという状態ではありませんから、差し当たり財政危機が発生することにはなりません。
いつ破綻してもおかしくない状況
しかし、家計の金融資産は1470兆円で、その総額は過去10年間ほとんど増えていません。家計は294兆円の負債を抱えていますので、純資産は1117兆円しかありません。しかもその大部分がすでに国債購入に充てられているわけですから、今後、政府が国債を発行し続ければ、国内で消化することが出来なくなり、海外の投機筋に将来の財政資金を依存することになります。また、国民の老後の蓄えを国が使ってしまっているのですから、将来世代が新たな預金をしてくれないと自分の預金が引き出せなくなります。
このような状態で、もし、新規の国債発行に不都合が生じたり、金利が上昇するようなことが起これば、財政は一気に破綻することになります。現在の財政状況とそれを取り巻く国内経済の環境のもとでは、その可能性が極めて高くなっています。もし、どこかで破綻の兆しが見え始めると、そのほころびは急速に拡大し、止めようがないことになります。
よく考えてみよう
政府が国民から税金を徴収する代わりに、国債を発行して国民からお金を借りています。国民が直接購入している国債は29.5兆円でごく僅かですが、824兆円の預貯金の大部分は金融機関が公債購入に使っています。また、年金や健康保険などの421兆円の基金からも184兆円分の公債が購入されています。このように国民の資産が国債購入に使われているのですから、国が税金を徴収して国債を償還しない限りこれらの家計資産は使えない状態になっています。
銀行預金は誰でも自由に出し入れできると考えているかもしれませんが、それは誰かが預けて、他の誰かが引き出すから預金額が維持されているのであり、皆が一斉に引き出し始めたら取り付け騒ぎになります。
銀行が購入している国債も、どこかが手放し始めれば一斉に投げ売りされます。何がきっかけになるか判らないのです。
日本財政の二度目の敗戦
日本の財政は1945年8月の敗戦で破綻し、無一文の中から営々と再興してきたのです。当時、二度とこんな事は起こすまいという決意で、財政法第4條により赤字国債の発行を禁止したのすが、1965年に特例公債法が制定され、1975年以降、毎期国会が赤字国債の発行を容認してきました。民主主義の下では、国会の議決が民意として正当化されます。国民は政府が最大の公的サービスを提供することを求め、最小の費用負担を要求します。したがって、選挙で選ばれる国会議員が行う政治では、財政規律は特例公債法を通じて漏れ出し、ついに937兆円の大赤字を累積してしまいました。一般市民だけではなく、良識の持ち主である政治家、企業経営者、学者などの中にも、エセ・ケインズ学信者が多いのは困ったものです。
民主主義の政治には国民の良識が必要で、それが欠如すると、独裁の芽が顔を出すというのが歴史の教えです。
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