前回は、1980年以降の日本経済の動きを、国民経済計算の統計グラフを使って観察しました。その結果、デフレータの挙動が時期によって変化し、それらを三つの異なった挙動として把握できることが判りました。今回は、次のステップに進む前の準備運動として、そもそもデフレとはどういう現象なのか、ということを考えることにします。
デフレは「物価の継続的な低下である」と定義されます。物価は財やサービスの需要と供給の大きさによって決まります。需要が供給より大きければ物価は上昇し、供給が需要より大きくなると、物価は下降します。したがって、デフレ現象は供給が増えるときや、需要が減るときに発生します。
図4のグラフは横軸が財やサービスの生産量と所得、縦軸が物価を表しています。右上がりの曲線が総供給曲線で、右下がりの曲線が総需要曲線です。二つの曲線の交点Eが均衡点で、生産量Yと物価Pに対応しています。
総供給が増加すると、総供給曲線は右に移動し均衡点はE’になります。また、総需要が減少すると、総需要曲線が左に移動し均衡点はE”になります。どちらの場合も物価が低下していることが判ります。
それでは、財やサービスの供給は、どのようなときに増加するのでしょうか。まず、財やサービスの生産が増えると供給が増えます。時々、農産物が採れすぎて、市場に出すと値崩れするからというので、一部を廃却するということがあります。これなどは供給が増えると物価が下がるという典型的な例です。新しい製造方法や設備が開発されて、今までよりも安くて良い品がたくさんできるようになると供給が増えます。生産に従事する人が増えるときも、供給が増えます。日本の高度成長期には、農村から大勢の人が都会の工場に働きに来て、工業生産が急増しました。最近は、中国などの産業が発達して、世界中に輸出するようになりました。中国などからの製品の輸入が増えると日本国内の価格が下がります。いくらたくさん生産できても、コストが高いと、すぐに売れなくなりますが、中国は低賃金で安い製品を大量に生産するようになりました。
このように財やサービスの供給が増えて物価が低下することは需要側にとっては好ましいことが多いのですが、供給側には物価の低下が悪影響を及ぼすことがあります。
今度は、需要が減少する場合を取り上げてみます。財やサービスの必要性が少なくなれば需要は減少しますが、普通はそのような状態は起こりません。しかし、もし過剰な需要が発生したりすると、その反動で需要が減ることは考えられます。バブルの終焉期にはそういう状態が起こります。
一般的には、需要の減少は、所得の減少などによって物を買いたくても買うお金がないという状態によって発生します。また、所得が減っていなくても、先行きの景気が不透明で人々が将来に備えて消費を抑えて貯蓄を増やせば、需要は減少することになります。企業では、新しい投資を差し控えることになります。金利の上昇も貯蓄の増加をもたらし、需要が減少する可能性があります。また、少子・高齢化で生産人口が減少すると、所得が減るので需要の減少につながります。円高や海外市場の変化で輸出が不振になることもデフレ要因になります。
不況による所得の減少で需要が減ると、物価が低下して供給側の所得が減少します。その結果さらに需要が減るということになります。また、物価が低下し始めると、将来の物価がさらに下がると予測されて買い控えが起こり、需要はさらに下がります。このような状態をデフレ・スパイラルといいますが、一旦デフレ・スパイラルに陥るとそこから抜け出せなくなります。
このように、景気が低迷すると、通常は、デフレ状態に陥ります。政府は景気対策として財政政策を採用します。国債を発行して、その収入で公共事業を増やしたり、子ども手当を交付したりします。また、日銀は利子率を引き下げて企業が投資をし易くするなどの対策を実施します。また、銀行を通じて通貨の流通量を増やすようにします。逆に云えば、通貨の流通量を減らすと、需要の伸びが抑制されてデフレが進行します。
このように、デフレが発生する要因は、基本的には総供給の増加と総需要の減少ですが、どちらも色々な形をとりますので、実際の現象をよく観察しないと本当の原因を見過ごして、間違った対応をしてしまうかも知れません。
ここに記載した事柄は、ごく基礎的なお話ですので、初歩的な経済学の教科書やホーム・ページなどに詳しく書かれています。次回は、このような基礎知識を頭に入れておいて、実際の経済を検分します。
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