1月13日に大阪府立大学経済学部の同窓会が開催されました。大阪府の橋下知事は大阪には大学が沢山あるのだから、財政問題を抱えている府が費用を負担して大学を経営する必要はないだろうとか、大阪市立大学と重複する学部があるのだから、統合したら良いではないかというような見解を示して、大学の対応を求めています。大学の方は工学部などが主体となって研究の成果、人材育成の有用性などを知事に示して、大学の存続を訴えていますが、その過程で、12月3日に大学の理事長・学長から知事に対して改革案が提出されました。
改革案には、現在の7学部を4学域体制に移行させてして理系を強化した形にすると書かれています。大阪府立大学は農学部と工学部を母体にして出来た大学で、その後に経済学部を増設、社会福祉事業短期大学、看護大学、大阪女子大学を合併して、現在は工学部、生命環境科学部、理学部、経済学部、人間社会学部、看護学部、総合リハビリテーション学部を保有する総合大学になっています。新しい組織では、現代システム科学域、工学域、生命環境科学域、地域保健学域という四つの学域を持つ形になり、経済学部は現代システム科学域に移行することになっています。この学域は、知識情報システム学類、環境システム学類、マネジメント学類に分かれていて、経済学部はマネジメント学類を構成することになります。
このような大学の改革案の提出に先立ち、経済学部は11月26日に、改革案に対して「これは教育内容等の本質的議論がなされないまま作られたものであり、経済学部として同意できるものではない」ということを緊急声明として発表しています。
このようなやりとりは大学のオフィシャルサイトの中で公表されているので、極めて異常な状況です。大学の学生数は平成22年の募集人数では1学年が1362人でそのうち経済学部は250人になっていますが、総定員を維持したまま理系を強化するということは文系の学部の定員を減らすということなので、その点に特に経済学部が危機感を持っています。
大学院の社会人学生として経済学部に5年間お世話になったので、この一連の成り行きには危惧を抱いております。
元企業人として、世間一般の経済学部の教育について、以前から違和感を持っております。企業では経済学部などの文系学部の卒業生は企画管理、営業、資材調達、会計経理などの部門に配属されますが、一部の学生を除いて、ほとんどは大学で受けた教育とは関連の薄い業務に就きます。企業側では、学生が何を学んだかということより、何かを学んで身につける努力をしたことや、多くの人と交流をしたといった学生生活の経験を評価するということになります。このような仕組みが今後もこのまま続いて良いのかという点では、いくつかの動きがあるように思います。近年社会人を対象にした大学院教育が増えています。これは、社会人になってから改めて必要な学力を求めて大学に戻ってくる姿です。また、大学によっては教育の内容を社会のニーズに合わせて変えているところもあるようです。また、従来はほとんどの学生は4年間の学部を卒業すると就職していました。最近は大学院の前期課程で特定の部門の高度な教育を受けて、その知見が生かせるところに職を求めるということもできるようになっています。しかし、理系のように学部の卒業生の80%以上が大学院に進学し、より高度な技術知識を身につけて、それを職場で実用化するというのとは全く異なっています。
大阪府立大学の経済学部は大きな危機に直面していますが、大学教育の存在意義という点からその研究と教育の内容を検討して、新しい理念に基づいた制度に再編することが、社会のニーズに適合した大学という生き残りと将来発展につながるのではないかと思います。経済学の課程には、ミクロ経済、マクロ経済、計量経済といった基礎的な領域と、金融、財政、国際経済、地域経済、公共経済というような応用領域があります。これ等は学問としての領域であり、研究者や教育者の育成という点ではこのような領域で高度な教育を行うのは意味があると思いますが、社会の経済活動の役に立つ人材育成という視点では、人と社会、財の生産と分配、金融と財政、組織活動、というような切り口で学科を見直すことが必要で、いつまでも同じ講座が継承されていることに問題があるのではないかと思います。
昨年暮れに大阪大学工学の同窓会の機械部会総会で昔と今の教育制度の変遷についての説明がありました。50年前にあった講座名は全く姿を消して、ルーツをたどるのも難しい状態になっています。学部では、まず機械力学、熱力学、流体力学、固体力学という基礎学科をどこに出しても恥ずかしくないように徹底的に鍛え、その上に制御、情報、設計、生産というシステム概念を重ね合わせ、複合メカニックス、マイクロ機械科学、知能機械学、総合デザイン工学の4分野に整理して教育と研究を行っているということでした。高度な技術の進歩と、多様化した社会ニーズに対応するために大学の教科内容は、複雑すぎて理解できないほどに変わってしまっていました。
大阪府立大学の経済学部は、現在は経済、経営、法学の三分野の学域を包含した経済学科と経営学科に分かれています。このような枠組みは、過去の歴史の中でほとんどほとんど変わっていないのではないかと思います。もし、この3分野に情報処理の技術を加えれば社会が求める人材の教育ができる多様な仕組み作りができるのではないかと思います。ピンチはチャンスですから、この機会に新しい組織を作って欲しいと思います。国の将来はどれだけ技術革新により新しい産業を生み出すことが出来るかにかかっています。しかし、技術が生かされるためには、効率的なマネジメントが不可欠で、理系だけでは折角の技術が生かされません。ひとつのキャンパスに理系と文系の学部がありながらその間の交流がないのは宝の持ち腐れです。この点も大学改革の中に折り込んで欲しいと思います。
投入する財政資金が足りないから規模を縮小するということよりも、投入資金による成果を拡大して収益を増やす方がより健全だ、というのが経済学の教えではないでしょうか。
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