ニックネーム:ものづくり三世
性別:男
年齢:エルビス・プレスリーと同じ日に生まれた
都道府県:大阪府
2010年02月23日(火)
財政赤字をどう考えるのか
【国債発行高872兆円は大問題なのか?】
2月11日付けの日経新聞によると、日本の国債発行残高が2009年末に871.5兆円に達し、国民一人あたりの借金は693万円になったということです。このような記事を読むと、国の借金は国民の借金だというように思えます。しかし、実際は、国が国民から借金をしているのです。そして、その借金は国民のために使われているのですから、国の借金がいくら多くても、国が大きな負担を背負っているわけではないし、国民が損をしているわけでもないと考えることも出来ます。

【国民は納税しなくてもサービスをしてくれる政府を選択してきた】
このように国の財政を借金で賄うことが常態化したのは、戦後では1965年からですが、特に平成バブルが崩壊したあとの1994年からは、急速に国債依存度が高くなりました。本来、国の財政は課税で賄うものですが、景気の変動があると景気対策が必要になり、国民は国に公共投資などの歳出を増やして景気を良くするように求めます。そうすると当然税負担が増えますが、国民は増税には反対します。また、ケインズの経済学というのがあって、不況になると、国は借金してもよいから投資をして総需要を増やすべきだという考えが支持されます。そういうわけで、国は、国民の求めに応じて、課税ではなく国債発行で資金を調達して景気対策を行ってきました。その結果、国民は税金を納めなくても財政出動をしてくれる政党を支持し、自民党政権は国民とケインズの声を支えに長期政権を維持して、国債発行による公共投資を拡大してきました。このような仕組みは、税金であろうと国債であろうと、国民の所得の一部が政府の手に渡り、政府がそれを国民に財とサービスの形で返すのですから、政府と家計の間の収支は辻褄が合っていることになります。
この仕組みを判りやすく言うと、次のようになります。国民が銀行に預金をします。銀行は預けられたお金で国債を買います。すると、政府はその国債を売ったお金を例えば子ども手当として国民に交付します。道路建設をすればお金は建設業者の手に渡り、作業者の給料になって国民のところに帰ってきます。だから、お金がぐるっと回るだけで、貸し借りの関係は消えてしまうのです。

【国債を償還出来なかったらどうなるのか】
国債というのは、政府が国民から借金しているのだから、いつかは返さないといけないが、こんなに多額の借金は返せるはずがないと思われています。しかし、ものは考えようで、国債を償還するためには政府は国民から税金を取るので、その税金と国債の償還金が相殺されて貸し借りなしになります。政府の借金が872兆円もあるのは気持ちが悪いと思うかも知れません。それなら国民が税金を872兆円分納めればいいのです。そうすると国債の還付金の872兆円が国民のところに帰ってきますから、これもトントンになって、税金お支払いが負担になることはありません。

【国債発行は次世代にツケを回すのか】
また、財政赤字の拡大は次世代にツケを回しているのだといいますが、決して次世代に負担が回ることはありません。前に書いたとおり、現在の財政収支の決済は現世代が済ませています。その現世代が死に絶えると、国債は次世代に遺産として渡ります。これは形だけの遺産であって、次世代にはなんの得にもならないし、なんの負担にもなりません。遺産でもらった国債を償還して貰うためには、次世代は税を納めないといけません。その税は国債の償還金として次世代に戻ります。だから、全く負担にならないのです。ただし、国民全体が納める税金を国債保有者に回すので、国民相互の間に損得が起こります。これはご先祖様の段階で国債を買って財政を支えた人と、国債を買わずに、その恩恵を受けた人がいることの裏返しであり、ご先祖様と合わせて考えると損得無しということになります。

【国債は無制限に発行できるのか】
それなら国債の発行をどんどんやればいいのかというと、それには自ずと限度があります。税であろうと国債であろうと、国民の負担ですから、所得に対する割合が大きくなりすぎると国民は支払を拒否します。そうなると、それ以上の国債発行は出来なくなります。

【外債を発行するとどうなるのか】
国民が引き受けなくなると、外国に国債を買って貰うということが起こります。そうなると国民のお金が国民に戻るだけというサイクルが複雑になって、財政は泥沼に入る可能性がありますから、こういう手段はやめないといけません。外国に国債を売ると、外貨が入ってきます。それに見合う円価を日銀が政府に渡し、それが国内に支払われます。そうすると通貨の流通量が増えて物価が上昇します。国債発行によって手に入った外貨は、国内で流通させることはできないので、政府が海外で運用することになります。
現代の日本は貿易黒字国ですから、外貨が必要だという理由で外債を発行するのではありません。だから、外債の発行は、本当の所、必要がないことです。政府紙幣を発行して財政を立て直すという話があります。外債の発行はこれと余り変わりません。別に外債を発行しなくても政府が紙幣を印刷して、それを公共投資や社会保障費に使えばいいのです。このときも、インフレになります。このような手段はインフレ課税だと言われているのですが、その妥当性についても疑念があります。

【鳩山政権の財政運営はうまく行くのだろうか】
鳩山政権は4年間の任期中には消費税の引き上げをしないと宣言しています。それなら、現在の税収に合わせて歳出を抑えることができるのかという点に注目が集まります。今までの自民党政権のやり方は無駄が多いということで、歳出を切り詰められると思っていたが、実際に事業仕分けをやってみると、そう多くの無駄があるわけでもないことが判ってきました。そうすると、財政収支はどうなるのかですが、埋蔵金も無尽蔵にあるわけではありません。どこかで方針を変えて歳出を制限するか、さもなければ、増税に踏み切らないといけなくなるはずです。それとも自民党のように国債を無制限に発行するのでしょうか。

【国民所得のうち政府が使うのはどの位の割合が適当か】
最初に書いたように、政府が国債発行で手に入れたお金は国民のために使われるので、その点では何も国民が異議を申し立てることはありません。しかし、国民の所得のうちで、政府が使う部分と国民が自分で使う部分との割合は、国民の意向に従う必要があり、無制限に政府が使えるわけではありません。その点は国民負担率によって判断されます。
日本財政の国民負担率は、財務省の2月18日付けの資料では、国内総生産比で39.0%と報告されています。国際比較ではアメリカが34.9%、イギリスが48.3%、ドイツが52.4%、フランスが61.2%、スエーデンが64.8%になっています。この国民負担率というのは、税と社会保障費の合計の国内総生産に対する百分比です。福祉国家をめざすならば北欧並の高い負担率にならざるを得ないと思います。この負担を税で負担するのか保険料で負担するのかはケース・バイ・ケースでしょうが、どっちにしても国民の負担であることに違いはありません。
【国民は国の財政を政府に任せっぱなしでいいのか】
国民も、いい加減に国の財政を、自覚のない国債発行に任せずに、税を払って自ら支えるという意識を持つべきです。そのためには、公共サービスに見合う税をきちんと徴収しないで人気取りをして、裏で国債を増発して財政を支えるような「まやかしの政党」には選挙の時に投票しないというような姿勢を示すべきだと思います。そうすることによって、財政規律を守る方向で財政改革が実行できるのです。税と国債が等価だからといって、財政規模が90兆円で、課税収入が50兆円を切っているという状態が、正常でないことは明白です。しかし、そんなことは政府が勝手にやっているのだというのも間違いです。赤字国債は特例公債という名の通り、特別に発行が許されるもので、毎年度の国債発行は国会の承認を得て行われています。つまり、国民が毎年度それを承認していることになります。さらに付け加えるなら、国債の発行を認めるということは、その発行高に応じて将来税を納めることを約束していることになります。さもなければ、国債の購入金は購入者の手には帰ってこないのです。

【今後の財政運営はどうしたらよいのか】
アダム・スミスは国富論の中に「いったん国債がある程度蓄積されると、私の信じるところでは、公正かつ完全に償還された例は一つもない」と書いています。(水田洋監訳、杉田忠平訳「国富論」岩波文庫)
872兆円の債務は簡単に返すことはできません。だから過去の債務を償還することは諦めることになります。その代わり、せめて毎年度の財政均衡を税収で維持するようにして、その中で債務に対する利子の蓄積も抑制すれば、財政問題はとりあえずすっきりします。
そうすると、平成22年度予算では予算総額92兆円に対して公債金が44兆円見込まれていますから、これを例えば消費税で賄おうとすると、税率を現行の5パーセントから約25パーセントに引き上げることが必要になります。これは北欧諸国並みの水準であり、福祉国家に仲間入りすることになります。そんなに増税したら景気がますます悪くなると心配する向きが多いと思います。1997年に消費税を2パーセント引き上げただけで景気が落ち込んだという経験を取り上げる向きもありますが、あの時の景気の落ち込みは拓銀などの金融破綻が原因であったという方が妥当だろうと思います。とにかく、増税しなくても、それだけのお金を、国民は自分で消費せず貯蓄して、そこから国債として政府にお金を渡しているのですから、理論的には総需要が減るわけではありません。
政府の歳出には国債費が20.6兆円計上されています。これは主として国債の金利負担ですが、国が支払う金利は国民が受けとるので、これも国と国民の間では収支が相殺されます。ただし、同じ国民のなかでも、税を納める人と金利を受けとる人は異なるわけで、全く公平だというわけではありません。もしこの点が問題になるなら、税制を変えるということも必要かも知れません。さらに、将来に利子率が上昇したらどうなるかという心配もありますが、そのような場合は経済成長や物価の上昇を伴うはずですので、余り心配する必要はないのではないかと思います。
2010-02-23 11:17 | 記事へ | コメント(0) |
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2010年02月15日(月)
デフレについて A デフレとはどういう現象なのか
前回は、1980年以降の日本経済の動きを、国民経済計算の統計グラフを使って観察しました。その結果、デフレータの挙動が時期によって変化し、それらを三つの異なった挙動として把握できることが判りました。今回は、次のステップに進む前の準備運動として、そもそもデフレとはどういう現象なのか、ということを考えることにします。
デフレは「物価の継続的な低下である」と定義されます。物価は財やサービスの需要と供給の大きさによって決まります。需要が供給より大きければ物価は上昇し、供給が需要より大きくなると、物価は下降します。したがって、デフレ現象は供給が増えるときや、需要が減るときに発生します。
図4のグラフは横軸が財やサービスの生産量と所得、縦軸が物価を表しています。右上がりの曲線が総供給曲線で、右下がりの曲線が総需要曲線です。二つの曲線の交点Eが均衡点で、生産量Yと物価Pに対応しています。
総供給が増加すると、総供給曲線は右に移動し均衡点はE’になります。また、総需要が減少すると、総需要曲線が左に移動し均衡点はE”になります。どちらの場合も物価が低下していることが判ります。
それでは、財やサービスの供給は、どのようなときに増加するのでしょうか。まず、財やサービスの生産が増えると供給が増えます。時々、農産物が採れすぎて、市場に出すと値崩れするからというので、一部を廃却するということがあります。これなどは供給が増えると物価が下がるという典型的な例です。新しい製造方法や設備が開発されて、今までよりも安くて良い品がたくさんできるようになると供給が増えます。生産に従事する人が増えるときも、供給が増えます。日本の高度成長期には、農村から大勢の人が都会の工場に働きに来て、工業生産が急増しました。最近は、中国などの産業が発達して、世界中に輸出するようになりました。中国などからの製品の輸入が増えると日本国内の価格が下がります。いくらたくさん生産できても、コストが高いと、すぐに売れなくなりますが、中国は低賃金で安い製品を大量に生産するようになりました。
このように財やサービスの供給が増えて物価が低下することは需要側にとっては好ましいことが多いのですが、供給側には物価の低下が悪影響を及ぼすことがあります。
今度は、需要が減少する場合を取り上げてみます。財やサービスの必要性が少なくなれば需要は減少しますが、普通はそのような状態は起こりません。しかし、もし過剰な需要が発生したりすると、その反動で需要が減ることは考えられます。バブルの終焉期にはそういう状態が起こります。
一般的には、需要の減少は、所得の減少などによって物を買いたくても買うお金がないという状態によって発生します。また、所得が減っていなくても、先行きの景気が不透明で人々が将来に備えて消費を抑えて貯蓄を増やせば、需要は減少することになります。企業では、新しい投資を差し控えることになります。金利の上昇も貯蓄の増加をもたらし、需要が減少する可能性があります。また、少子・高齢化で生産人口が減少すると、所得が減るので需要の減少につながります。円高や海外市場の変化で輸出が不振になることもデフレ要因になります。
不況による所得の減少で需要が減ると、物価が低下して供給側の所得が減少します。その結果さらに需要が減るということになります。また、物価が低下し始めると、将来の物価がさらに下がると予測されて買い控えが起こり、需要はさらに下がります。このような状態をデフレ・スパイラルといいますが、一旦デフレ・スパイラルに陥るとそこから抜け出せなくなります。
このように、景気が低迷すると、通常は、デフレ状態に陥ります。政府は景気対策として財政政策を採用します。国債を発行して、その収入で公共事業を増やしたり、子ども手当を交付したりします。また、日銀は利子率を引き下げて企業が投資をし易くするなどの対策を実施します。また、銀行を通じて通貨の流通量を増やすようにします。逆に云えば、通貨の流通量を減らすと、需要の伸びが抑制されてデフレが進行します。
このように、デフレが発生する要因は、基本的には総供給の増加と総需要の減少ですが、どちらも色々な形をとりますので、実際の現象をよく観察しないと本当の原因を見過ごして、間違った対応をしてしまうかも知れません。
ここに記載した事柄は、ごく基礎的なお話ですので、初歩的な経済学の教科書やホーム・ページなどに詳しく書かれています。次回は、このような基礎知識を頭に入れておいて、実際の経済を検分します。
2010-02-15 21:46 | 記事へ | コメント(0) |
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