2006年03月24日(金)
加圧トレーニング
「加圧トレーニング」をご存知でしょうか?いろいろなメディアで紹介されているので、知っている人は多いのかと思っていたのですが、わたしの周囲で広範囲の知識を持っていると思われる人々(5人ほど)に聞いてみたところ、誰も知りませんでした。

わたしも、面白そうだなという程度にしか知らないのですが、スポーツ選手だけではなく、病院でのリハビリにも使われて成果をあげているということですし、このトレーニング法の原理というのが、発展しそうな手法を含んでいるので、取り上げてみたいと思います。

このトレーニング法は、簡単に言えば、上肢や下肢の付け根を締めつけることによって血流を阻害した状態で、筋肉に負荷をかけるということらしいのです。軽い負荷でも大きな負荷をかけた場合と同様の筋力アップが望めるというのです。勝手な解釈をさせてもらうと、血流が阻害され酸素不足になることによって、大きな負荷がかかっていると錯覚して、大きな負荷をかけたときと同程度の生体物質が発生するらしいのです。人間の身体に錯覚を起こさせて、トレーニングしたと思わせるということのようです。身体機能に錯覚を起こさせることによって、普通には起こらない生体反応を引き出すという手法は、これから様々な分野で利用されそうな予感があります。どことなくツボ刺激に似たところがあるようにも思います。

軽負荷で高負荷に相当する効果が得られるので、寝たきりになった人でも筋肉の強化が可能になるということです。紹介記事には、寝たきりの老人が1年間のトレーニングで、再び歩けるようになったことが書かれていました。

ところで、「加圧トレーニング」には、「筋力トレーニング方法」(特許番号 第2670421号)という特許権が設定されています。どんな権利か一部(特許請求の範囲には3つの発明が記載されていますが、請求項1)を抜粋します。

「筋肉に締めつけ力を付与するための緊締具を筋肉の所定部位に巻付け、その緊締具の周の長さを減少させ、筋肉に負荷を与えることにより筋肉に疲労を生じさせ、もって筋肉の増大を図る筋肉トレーニング方法であって、筋肉に疲労を生じさせるために筋肉に与える負荷が、筋肉に流れる血流を阻害するものである筋肉トレーニング方法。」

これを読んでどんな感じですか?
(1)意味分からない
(2)自分も特許とりたい!
(3)なぜこれが発明?
(4)権利になった経緯を調べなくては!

じつは、人の身体を利用する発明は、技術ではないので(発明の要件には「技術的思想」であることが含まれています)、日本では特許権を取得することができないはずで、トレーニング方法というような特許は日本では普通にはあり得ないのです(アメリカならあり得ますが)。ですから、(3)の感想を持った人は、特許をある程度知っている人でしょう。

個人的な見解ですが、この特許の本質は、筋肉の血流を阻害する程度に筋肉を締めつける道具にあり、トレーニング方法そのものではないと思います。その理由は先に書いた通りです。おそらく、この特許の特許権者はトレーニング方法そのものが権利だと考えていると思いますが、この道具が権利の本質なのだろうと思います。

こんな変わった発明の話は、「知られざる特殊特許の世界」(稲森謙太郎 太田出版)でも読んでみてください。発明に関する面白い話が満載です。それから、「加圧トレーニング」に興味のある方は、ウェブページがあるので見てください。特許のことを書いたのは、このトレーニング法にケチをつけようというのではありません。高齢者のリハビリなどの目的では大いに期待しています。けれど、せっかくのよい方法なのだから、特許権などと言わずに、誰もが使えるように普及させて欲しいと思っているのです。なお、このトレーニングに使う器具は、一部のスポーツ用品店で扱っています。指導もしてくれるそうです。
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2005年03月01日(火)
香りのトレーニング
これは何?
上は「BORSARI 1870 fragranze da collezione」
下は「Le Nez du Vin」

ボルサリは、調香師のルドヴィコ・ボルサリという人が1870年にイタリアのパルマに開いた香りの工房の名前だそうだ。その調香師が、いろいろな花の花びらや葉から抽出したエッセンスと同じものをコレクションにしたのが、ボルサリ1870だ。イタリア製である。
 花の香りのする24種類のエッセンスを小瓶につめてケースに入れてある。ケースは15.5×11.5×5.5センチの本のような形の箱で、本を開くように展開すると、片側に12個ずつの小瓶が入っている。それぞれの小瓶が、個性のあるいい香りを漂わせている。瓶を開けなくても、箱を開くだけで、いい香りがして気分がよくなる。これを一体いつどこで手に入れたのか記憶にない。15年くらい前にどこかで買ったのだが、値段もなにもまったく覚えていない。

 下の「ル・ネ・デュ・ヴァン」は、そのまま訳せば「ワインの鼻」だ。これはフランス製。こちらは、辞書のように外箱(19.5×13×4センチ)付きで、内箱を開くといろいろな香りのする液体を詰めた12個の小瓶と、それぞれの香りについて解説したカードが12枚入っている。英語圏向けの製品らしく説明は英語である。これは、何をするものかというと、ワインの香りを嗅ぎ分ける訓練をするものだ。4、5年前に入手した。
 メグ・ライアンやジャン・レノが出演していた「フレンチ・キス」という映画をご存じだろうか?その映画の中で、ネックレスを盗んだ泥棒が、高校生の頃につくった香りの訓練セットをメグ・ライアンに見せるシーンがある。ル・ネ・デュ・ヴァンはあの訓練セットと同じようなものだ。

 こんなものを持っているのは、香りというものに興味があるからだ。人の感覚の中で、味(口)と香り(鼻)を感じるセンサーは、光(目)、音(耳)、熱や圧力(手)を感じる物理センサーとは異なる化学センサーである。私がここで化学センサーといっているのは、物質を分子レベルで識別できるセンサーという意味だ。同じ化学センサーでも、味覚のほうはある程度分類されており、たとえば甘味、塩味、苦味、酸味は、生物学の教科書などに舌の感じる味として載っている。料理における味というのは、もう少し広く、辛味、渋味、えぐ味、旨味なども含まれるが、味覚細胞が持つ機能だけを化学センサーと考えれば、辛味、渋味、えぐ味は別になるのかも知れない。旨味についてはよく判らないが。

 いずれにしても、化学センサーはイオンを検出するものであるらしく、最近では、ビールの味を検査する人工的な化学センサーもできている。これは、それぞれ1種類のイオンを検出する複数種類のイオンセンサーを組み合わせた複合センサーてあり、各イオンセンサーの出力の分布パターンを見ることで、同じ味かどうかを検査するものらしい。

 味の場合にはイオンを検出するから水が必要であり、その役目をだ液が担っている。一方、香りはと言えば、揮発成分を検出する必要があるから、味を感じるしくみとは少し異なるようだ。最近では、ガスセンサーや口臭センサーのように、いくつかの化学物質を検出するセンサーが知られているが、味に比べて香りの分類はあまり明確ではないようだ。もちろん研究者レベルでは、香りの分類も進んでいるのだろうが、教科書に載る程度の一般知識にはなっていないようだ。

 だから、香りというものを味と同様に分類できないだろうか?と思い、香りを分類している分野がないかと考えたときに、香水とワインを思いついた。香水の分野では、グリーンノート、シトラスノートなどのように、香りを分類する用語があり、ワインの分野では、ラズベリーのような香り、煙のような香りなどのように、何かにたとえて香りを分類する方法が知られている。

 こうした分野では、香りの種類を細かく分けてはいるが、それでも同種の香り、同種のイメージを持つ香りということであり、香りの成分別に分類されているわけではない。これは、きっと香りというものは、物質の種類だけではなく濃度によっても変化するやっかいな対象だからなのだろう。たとえば、インドールという物質は、排泄物の臭気の一成分だが、ジャスミンの芳香成分でもある。濃度が何桁か違うそうだが、物質の濃度が変わると、臭いものがいい香りになるというのだから不思議だ。

 結局、香りを味のような方法で分類するのは困難なのだ。だから、香りを言葉にしようとすれば、写真のようなセットを使って言葉と香りを結び付けるトレーニングをしなければならないのである。
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