2009年12月05日(土)
見送られた貨物検査法案と厳しくなる海保予算
 本格的に動き始めたはずの貨物検査法案ですが、ここに来て見送られることになりました。

北朝鮮対象の貨物法案成立を断念 郵政法案は12月1日衆院通過

 この件に関しては海保と税関に権限を付与する政府案と、自衛隊による海上警備行動を準用できる規定を盛り込んだ自民党案がありました。違いとしては自衛隊の関与を明文化していないのかどうか、という点です。逆に言えばそれ以外は条文に至るまで違いがほとんどありません。そのため、野党となった公明党は両案に賛成するという方針に出ました。

公明:政府案も自民案も「賛成」 船舶検査で苦肉の策
 公明党は26日の中央幹事会で、北朝鮮に出入りする船舶を検査する貨物検査特別措置法案(政府案)と、北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案(自民党案)の両案に賛成する方針を決めた。政府案は海上保安庁が検査を行うが、自民党案は自衛隊の関与も認めている。公明党の対応には、民主、自民両党との距離感を測りかねる苦悩が反映されている。
 自民案とほとんど違いがない上、公明も賛成しているにもかかわらず、なぜ今回の成立を断念したのでしょうか。

 やはり与党内の社民党の存在がネックになっているようにも思えますが、実は社民党も早期成立に同意しています。冒頭の記事でも
 国会が12月4日まで4日間会期延長されることを受け、与党3党は30日午前の国対委員長会談で、貨物検査など2法案を成立させる方針をいったん確認。
というように書かれていました。しかし、別の理由を思わせる内容の記事があります。

貨物検査法案、継続審議へ=郵政凍結法案の成立優先−民主
貨物検査法案は、自民党が参院国土交通委員長を握っていることから、継続扱いとせざるを得ないと判断した。
 結局のところ直接の与野党対立ではなく、説得することを自ら放棄しただけのようです・・・。現時点で既に、成立のタイミングをかなり遅らせている「貨物検査法案」を、港も簡単に諦めてしまっていいのでしょうか・・・?

 また、自民党も実質的には貨物検査に影響しない「自衛隊の参加」が明文化されていない点について反対しているとすれば、この法案の本質をなんら理解していないことになります。結局のところ、法的根拠を求める現場の声などはどうでもよくて、政治的駆け引きの道具でしかないのでしょう。

貨物検査法案 先送りは国際責務の軽視だ(12月2日付・読売社説)
 北朝鮮に核放棄の道を歩ませるには、関係国がそろって制裁決議を着実に履行し、圧力をかけ続けることが不可欠だ。その国際包囲網に日本が加わる前提が、貨物検査特措法案の成立である。

 通常国会に続き、臨時国会で法案を成立させられなければ、国際責務を担う日本の意思と能力に疑問符がつきかねない。政府・与党にはその危機感が欠けている。
(略)
 自民党が自衛隊条項の削除を問題視するのは、緊急時への備えとして当然だ。だが、自民党も、それ以外の法案内容では与党と一致しながら、成立させないのは国益を損ねる。与野党は、もっと建設的な協議をすべきだった。
 この国際包囲網がどの程度北朝鮮への圧力になっているのかは、彼ら自身が証言してくれました。

北朝鮮、IMO総会で国際社会の「海上封鎖」非難
 北朝鮮は27日に英ロンドンで開かれたIMO総会に、高能斗(コ・ヌンドゥ)局長を団長とする国家海事監督局代表団を派遣した。高局長は総会演説で、「特定国の政治的動機により強要された他国への経済制裁と封鎖で、近ごろ平和的な貿易貨物船(コンテナ船)の自由な航海と船員の安全を脅かす事件が発生し、国際社会の大きな懸念を呼んでいる」と指摘。その上で、「国際海事の実践において、国際法と国連憲章の原則を無視した主権侵害行為は絶対に許されるべきではない」と主張した。
 「特定国の〜」「国際社会の〜」などといっていますが、彼らの主観世界ではない実際の世界ではその言葉は逆に入れられるべきです。平和的な貨物貿易船は実際にはミャンマーへの武器輸出を行っていたと思われる北朝鮮籍貨物船でした。これだけ北朝鮮が文句を言うということは、それだけの効果があると見るべきでしょう。

 北朝鮮船籍の貨物船は確実に疑われますし、貨物を第三国経由や第三国船で輸出入するにしてもそれだけの手間と費用を北朝鮮に負担させるという障壁となります。

 日本は以前からの独自制裁で北朝鮮籍船の入港ができませんが、この包囲網に参加できないことによって第三国経由での抜け穴になっている可能性もあるのです。


 更新停止中に、各地の海保での装備や施設の話題が出てきました。

巡視船解役:33年ご苦労さん 北海道・釧路
 第1管区釧路海上保安部所属の巡視船「いしかり」(320トン、24人乗り組み)が老朽化のため、今月限りで解役となった。道東海域を中心に33年間にわたって活躍し、昨年4月から指揮を執った石村孝三・第17代船長は「ご苦労さんのひとこと。古いのによく動いてくれた」とねぎらった。
(略)
 「いしかり」は民間に売却後、スクラップとなる見込み。一方、後継には第3管区下田海上保安部(静岡県)で主に密漁・密航の取り締まりに当たっていた巡視船「かの」が配属。「いしかり」の名と乗員を引き継ぎ、道東の海の守りに就く。
26年活躍「いよざくら」引退 松山海保巡視艇
 26年間、海難救助などに出動してきた松山海上保安部の巡視艇「いよざくら」(21トン)が3日、任務を終え、松山市海岸通の専用桟橋で解役式が行われた。乗組員ら約30人が献酒などをして別れを惜しんだ。

 同船は1983年に配備され、82隻の船と270人を救助し、海上保安庁長官表彰を10回受けるなどの実績を残してきたが、老朽化のため引退することになった。
巡視艇「いよざくら」が引退 松山で解役式

巡視艇くれかぜ披露 呉海保
 全長20メートル、幅4・5メートル。加藤公昭船長たち5人が操船し、30ノット(時速約55キロ)以上のスピードが出る。尾道市の木曽造船が約3億3千万円で建造。旧くれかぜと交代して11月26日に就役した。
第6管区海上保安本部に8年ぶりのCL船

 新船は、呉海上保安部(広島県呉市)に所属する「くれかぜ」と、松山海上保安部(松山市)に所属する「いよざくら」=写真。いずれも長さ約20メートルで約26トン。速さは30ノット。不審船などへ停船を命令する文字を電光表示できる装置を備え、夜間の監視能力が高まったという。1隻あたりの建造費は約3億3千万円。

 旧くれかぜは大分海上保安部へ所属替えとなり、新たに「ひめつばき」として就役。旧いよざくらは26年の任務を終えて退役する。
 「いしかり」は「かの」の配置換えで更新されるようです。両船ともPMですが「いしかり」は350トン「びほろ」型、「かの」は500トン「なつい」型。一見すると、大型化しているようにも思えますが、実は「びほろ」型は改4-350トン型で満載排水量は615トンもあります(総トン数は499トン)、「なつい」型は常備排水量630トン(総トン数526トン)なので、変わらなかったりします。

 武装に関しては12.7mmから20mmに強化されます。といってもRFSではないので、あまり変わりませんが・・・。「かの」は「いしかり」より10年若いとはいえ、このクラス自体そろそろ代替の時期が迫ってきています。「びほろ」型の更新は350トン型の「とから」型で既に始まっていますが、500トン型に関しては新型はありません。船型を整理して350トン「とから」型で統一するようです。予算と人員があれば1000トン「はてるま」型で更新してもいいと思うんですがね・・・。

 また、6管のCL2隻が更新されています。代替は両方ともに新規建造ですが、解役されるのは1隻のみで、もう1隻は配置換えです。


 さて、このように更新がなかなか進まない巡視船艇ですが来年度概算要求が見直され当初要求より減額されたことが明らかになっています。今月の「世界の艦船」(2010.1月特大号NO.717)海上保安庁ニュースによれば、132億円の減額のうち、船艇では1000トン型2隻の初年度要求額が減額、350トン型2隻はゼロとなり、20メートル型6隻が4隻となりました。また注目の「しきしま」級に関しても搭載ヘリの要求が見送られました。

 当ブログでは、この見直しでどこが削られるかが話題となりました。「しきしま」級を優先してCLなどの小型船艇が犠牲となるのか、老朽船艇対策を優先して「しきしま」級を諦めるのか・・・総監が得ていたのが、広くほとんどすべてのクラスに被害が及んだわけです。せめてもの救いは新規新型となる23メートル型の要求に関してはそのままだったということですか・・・。他にも通信情報機器関連や航路標識関係で10億円以上削られているとのこと。

 「しきしま」搭載ヘリを除けば、固定翼・ヘリに関しては新規継続ともに変更はないようです。

 固定翼機の更新は順調にすすんでいるようです。YS-11を更新するボンバル300が既に厚木の日本飛行機で試験中です。すでにJA723Aのレジスターで登録された同機は千歳に配備されます。

名機YS11道内見納め 1管の2機、年度内引退
 2機の愛称はともに「おじろ」。1971年と79年にそれぞれ海上保安庁に配備された。このうち、79年配備のYS機は、83年の大韓航空機撃墜事件で行方不明者の捜索に当たったほか、90年にはロシア・サハリンで大やけどを負ったコンスタンチン君を丘珠空港へ緊急搬送するなど活躍。71年配備機も、全国各地の海難・災害救助などに携わった。

 1管本部によると、79年配備機は12月18日に引退。後継機には、カナダ製ボンバルディア機「おおわし」が就航する。71年配備機も3月までに役目を終えるが、後継機は未定。
 羽田のYS-11は南鳥島のロランC局への補給連絡輸送にも使われていました。この施設も今月1日をもって閉局となりました。

南鳥島 電波無線局が閉鎖 GPS発達も漁師惜しむ声
雑記帳:「ロランC」閉局 最東端の無線局
さよなら「ロランC」 南海の孤島、安全支えた半世紀
南鳥島の船舶無線局が閉鎖 海保職員も撤退へ

 以前の記事で、南鳥島への飛行はボンバルでは難しいのでは?と書きましたが毎日の記事にある写真にしっかりとその姿が納められています。最後の南鳥島への飛行はどちらが行うのでしょうか・・・。

2009年12月5日 00時12分 | 記事へ | コメント(2) | トラックバック(0) |
| 海上保安庁 / 北朝鮮問題 |
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2009年12月08日(火) 00:08 by ホッシー
日本って船は何処へいきたのかな?
ブログ主さんお久しぶりです
173国会の政府案と自民党案の違いは9条2項があるかどうかですが、結局のところ、どちらの法案でも、自衛隊は、海上警備行動の範囲しかできず、法案に規定される検査はできないというのが政府および自民党の見解です。
つまり政府案および自民案は本質的に全く同じということになります。
で、臨時国会おいて、成立しなかったのは、自民党がボイコットしたのが一義意的な理由でしょう。
仮に参院において国土交通委員会で自民委員長であっても、多数を握っている与党は付託先は自由にできます。すなわち民主委員長の外交防衛委員会に付託することは問題なくできるわけです。
だから、次の常会では問題なく成立するでしょう。
もっとも最近の米朝関係からすると、来年には本法案を成立させる意味合いがなくなる可能性もあるわけですが・・・。
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