2009年05月30日(土)
ソマリアに巡視船が海賊対策として派遣されている?


 前回の記事で取り上げた「ソマリアへの米巡視船派遣」問題ですが、その話題が出た外交防衛委員会の映像を見ることができます。ただし、この記事を書いている現在、NDL参議院の議事録にはまだUPされていません。

 書き起こされた状態で見ることはできないものの、生中継されていたものの録画映像を見ることができるので、それを元に詳細を調べてみようと思います。

参議院インターネット審議中継 −ビデオライブラリ 会議検索− 

 この映像を見れば分かると思いますが、この問題を取り上げたのは民主党の白眞勲議員です。自らのブログでも質問について述べています。



☆外交防衛委員会で質問を行いました。|||白しんくんホームページ - コラム -|||
私の直前に質問に立った議員に対しても、沿岸警備隊などを派遣している国はないと政府は答弁していましたが、私からアメリカはコーストガードの船を派遣している事実を挙げて答弁を求めましたが、「最新の状況を確認していなかった」と、明確にお答えはいただけませんでした。北朝鮮による核実験についてもお聞きしました。


 映像によると、派遣されている巡視船は「ボウトウェル」でCTF151にも参加しているとUSCGのサイトに掲載されているそうです。というわけで、USCGのサイトから該当するページを探してみました。

Two Cutters at a Crossroads and the HEC/NSC-type Mission Demand



 記事の内容としては、新型カッターであるバーソルフが制式に任務に参加(戦力化)したことによって、歴史あるハミルトン級長距離カッターと新たなる国家安全カッターの交差は沿岸警備隊史に残る歴史的な出来事になった、ということです。

 記事は、今後HECやNSCに求められる任務として現在各カッターが実施中の例を挙げて説明しています。それは、薬物密輸対策やIUU漁船の取締、捜索救助、国家防衛や環境保護ですが、そのうちの一つに以下のような文章がありました。
* Counter-piracy operations like those being conducted by CTF-151, including USCGC BOUTWELL.
「沿岸警備隊巡視船カッターを含めたCTF151によって行なわれる海賊対策作戦」と、しっかりと書かれております。実を言うと、自分もこの情報を把握していなかったので、あんまり外務省をバカにできないのですが・・・ボウトウェルはいつからCTF151に参加していたのでしょうか?CTF151のサイトには書かれていなかったように思います。

 上の引用部分にはリンクが張られていました。その先は米海軍協会USNIのブログ記事です。

BOUTWELL Crew Gives Shoutouts with the Commandant — Give One Back | USNI Blog

パキスタン海軍フリゲイト「ティップ・スルタン」とすれ違うUSCGカッター「ボウトウェル」


 記事としては「ボウトウェル」クルーに応援のコメントが送信できますよ、というものですが、実はそれだけでなく大きなヒントも書かれていました。
USCGC BOUTWELL round-the-world deployment
 右上の画像説明には「ボウトウェル」が世界一周中であり、多国籍の演習AMANにボクサー両用即応群の一部として参加したとあります。

 AMAN演習についての詳細は海軍公式サイトにもありました。

U.S. Navy, Coast Guard Ships Participate in Exercise Aman 2009
MANAMA, Bahrain (NNS) -- USCGC Boutwell (WHEC 719) departed Karachi, Pakistan, March 9 after a four-day port visit to participate in the international naval exercise Aman 2009, marking the first time a U.S. ship has pulled into Pakistan since May 2008.

The 10-day exercise, which began March 5, focuses on air, surface and maritime security training and includes representatives from 38 countries as well as ships from 11 nations to include the United States, United Kingdom, Pakistan and Australia. The at-sea portion of the exercise will primarily be conducted in the North Arabian Sea, off the coast of Pakistan.
 3月5日から10日間の演習だったようです。どうやら、揚陸艦ボクサーを中心とした遠征打撃群に参加するために出港していたようですが、演習までの間にマレーシアの海上法令執行庁MMEAの訓練を行なったり、インドに寄港したり、モルジブ国防軍と法執行シンポジウムを行なったりしています。

また、今回の出港に関してはUSCG自身からのリリース発表もあります。

Coast Guard Cutter Boutwell to Deploy in Support of Department of Defense Operations and International Training Exercises
While the Coast Guard is most typically known for performing its suite of maritime safety, security and stewardship missions close to home, the service is also called upon to support Department of Defense missions far from U.S. shores. In earlier years, U.S. Coast Guard cutters on similar deployments have guarded Northern Arabian Gulf oil platforms in the opening days of Operation Iraqi Freedom, provided first aid response to Indonesian tsunami victims, and provided humanitarian aid to the nation of Georgia. During a 2006 deployment, Coast Guard Cutter MUNRO worked with Navy counterparts to interdict pirates off the Horn of Africa, which given recent world events, is a mission that BOUTWELL is prepared to encounter.
意訳:
沿岸警備隊で最も知られているのは本土近くでの海上保安任務ですが、アメリカから遠く離れて国防総省をサポートする任務もあります。以前から、沿岸警備隊カッターは「イラクの自由」作戦開始日より北アラビア湾の石油プラットフォームを警備し続け、インドネシアの津波被災者に即座に最初の救援を行い、グルジアに人道支援を行いました。2006年は巡視船マンローが「アフリカの角」で海賊を阻止するために海軍と共に働きました。ボウトウェルも昨今の世界情勢を鑑みてそのような任務に対応できるよう準備しています。



・・・どうも、白議員の言うように海賊対策のためにアメリカ沿岸警備隊巡視船が出港したというよりも、世界一周航海の一環として、そして米軍水上部隊の一部として、ソマリア沖に来てCTF151に参加しただけなのではないでしょうか?

 その証拠に、このUSCGカッター「ボウトウェル」はアメリカ中央軍の指揮下にあります。


More on the CG Building Legal Capacity in Africa…
Coast Guard assets (LEDETs, Patrol Boats, and High Endurance Cutters) deployed to U.S. Central Command (CENTCOM) are supporting CTF-151 efforts to interrupt and terminate acts of piracy and are seen as the subject matter experts in the conduct of boardings by our US and coalition partners. LEDET 405 is currently conducting boardings with Navy Visit Board Search and Seizure (VBSS) teams in the Gulf of Aden. LEDET 405’s current role is to supplement the navy VBSS team and train them in:

o Maritime Laws
o Boarding policies and procedures
o Evidence Collection and preparation
o Tactical procedures

USCGC Boutwell has deployed to CENTCOM for a 3-4 month deployment. It is probable that USCGC Boutwell will be assigned to CTF-151 since the USCG is seen as subject matter experts in the conduct of boardings in this “law enforcement related” operation. Coast Guard vessels may also, in the future, carry foreign shipriders to enforce law in the region.
意訳:
米中央軍CENTCOMに展開する沿岸警備隊勢力(LEDET法執行分遣隊、警備艇、長距離カッター)は海賊を阻止し撲滅させるためのCTF151の試みを支援し、米国や連携国の間で臨検の専門家であるとみなされています。LEDET405は現在アデン湾で海軍VBSSとともに臨検を実施中です。LEDET405の今の役割は海軍VBSSを補佐し、以下のような訓練を行なうことです。

・海事法令
・臨検方針と手順
・採証活動と準備
・戦術手順

巡視船ボウトウェルは3〜4ヶ月、中央軍に配置されます。それは「法執行関連」作戦での臨検指導の専門家としてUSCGがみなされているため、ボウトウェルがCTF151に参加することもありうるということです。将来的には、地域で法令を執行するために外国からの上乗せ要員が沿岸警備隊の船艇で運ばれるかもしれません。


 民主党としては、これを根拠に海保巡視船派遣を主体に・・・と言いたい所なのでしょうが、どう見ても無理です。沿岸警備隊カッターの派遣は「ついで」であり、法執行の主体となっているのは日本の海保派遣捜査隊と同じくLEDETです。

 たまたま、立ち寄っただけでも「派遣」となるなら、海保大練習船の巡視船「こじま」が遠洋航海で立ち寄るだけで十分ということになります。もしくは今の海自護衛艦派遣のような独自の部隊ではなく、CTF151の指揮下に入れということなのでしょうか(海保巡視船が)。


(続く)
2009年5月30日 22時51分 | 記事へ | コメント(1) | トラックバック(0) |
| 海賊関係 / 海上保安庁 / アメリカ沿岸警備隊 |
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2009年06月05日(金) 09:33 by 今年3月で人員削減に遭い無職になったヲタクです。
初めまして!

いつも楽しく拝見させて頂いております。

民主党等の知識を得ないイチャモンには呆れますねえ。

この白議員は、民主党次の内閣で防衛副大臣になってますが、この人の日頃の言動を見聞きしていると反日思想の持ち主としか、思えないのですが・・・

今回の件でも、軍事組織のアメリカ沿岸警備隊と警察組織の海上保安庁を比較している時点で間違っていると思いますが、与党も外務省も突っ込みも反論もしない所が悲しいですね。

民主党に言いたいのは、自衛隊を嫌うのは勝手だけど、その口実に海上保安庁を利用しないで欲しいです。

人員増員や予算増やしてくれるのなら、大歓迎ですがね。
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