2009年03月24日(火)
シャイトの「マニフィカト」
今日3月24日は、ザムエル・シャイト(Samuel Scheidt, 1587 - 1653)の忌日である。すなわち、1653年の3月24日に「ドイツバロックの3S」の一人である彼が亡くなったのである。

ちょうど、ナクソス・ミュージック・ライブラリーの「新着タイトル」を眺めていたら、“SCHEIDT”と大書されたこのディスクに目が留まったので早速聴いてみた。

演奏はマルティン・フレーミヒ指揮ドレスデン聖十字架合唱団&ライプツィヒ・カペルラ・フィディーチニア(Capella Fidicinia Leipzig)である。ライプツィヒ・カペルラ・フィディーチニアは初めて聴く楽団なのでネットで調べてみると、ウェブサイトはあったもののドイツ語のみである。

私の拙いドイツ語で読み取れる範囲によると、16世紀から18世紀にかけての音楽を演奏するため、音楽学者のハンス・グリュース(Hans Grüß, 1926 - 2001)によって1957年に設立され、彼の死後はその弟子であるマルティン・クルンビーゲル(Martin Krumbiegel)によって主宰されているそうである。ピリオド楽器による演奏であることは、音を聴けばすぐ判る。

この「コンチェルトゥス・サクリ(Concertus Sacri)」と題されたディスクの収録曲は以下の通りである。

1.Hodie completi sunt, SSWV 75
2.Misit eos in universum mundum, SSWV 76
3.Magnificat, SSWV 84
4.Laudate Dominum in sanctis eius, SSWV 72

全部ラテン語の歌詞なので、よく演奏される3曲目の「マニフィカト Magnificat」以外は歌詞の内容は解らない。因みに、「マニフィカト」は、“Magnificat anima mea Dominum (わたしの魂は主をあがめます)”という歌い出しで始まる歌で、マリアが神を讃えた歌であることは、今さら申し上げることもなかろう。

まず聴き始めてすぐ私を捉えるのは、鄙びたオルガンの音ともにともに始まる男声だけの三重唱と、それに続く少年合唱隊を含む合唱によって繰り広げられる古楽独自の世界である。ここでは、言葉は副次的な要素に過ぎず、音楽がほとんど全てのことを語り尽くしている。

2曲目は美しいリコーダーの音に引き込まれて、またしも自然に聴き入ってしまう。続く「マニフィカト」は思ったほど華々しく始まるわけではなく、マリアの喜びを厳かに表現するように始まるが、合唱はそれに対してかなり迫力がある。

全部で12節からなるこの詩が、時にはア・カペラのモノフォニックな朗誦として登場するが、合唱の部分は優れてポリフォニックで重厚感と禁欲的な厳格さを漂わせている。1行ずつ異なった構成で、変化を持たせているところに、「3S」の中の一人、シャイトの手腕を感じないわけにはいかない。

最後の“Laudate Dominum in sanctis eius”は、「主を讃めたたえよ」という意味か。この曲は、「マニフィカト」のように朗誦の部分がなく、ボーイソプラノの天使のような歌声が浮遊したり、男声の三重唱が行き交う音響空間を、各々の古楽器独特の「枯れた」響きが綺麗に縁取る。

男声のみの合唱曲集が、これほど美しく響くのを聴いたのは初めてである。
2009-03-24 22:06 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
| シャイトを聴く / 古楽について |
トラックバックURL:http://blog.zaq.ne.jp/Kazemachi/trackback/567/
※ブログ管理者が承認するまで表示されません
2007年12月15日(土)
シャイトを聴く
さて、今日は「ドイツの三大S」の最後の一人、ザムエル・シャイト(Samuel Scheidt, 1587 - 1654)の音楽について語ろう。と言っても、シャイトを聴くのは今回が初めてである。私が選んだのは、ドイツのCPOレーベルから出ている「宗教的コンチェルト集」で、ウィルソン指揮ムジカ・フィアタ&ラ・カペラ・ドゥカーレの演奏である。前にも書いたように、彼はオルガ二ストとして有名なのでオルガン曲を選ぶべきかも知れないが、私がオルガン音楽にいまいち興味がないので声楽曲を選んだ。

「室内カンタータのような性格の『宗教的コンチェルト』はこの作曲家が得意とした分野であり」とセールス・コピーにあるように、聴いていて温もりを感じる演奏である。ムジカ・フィアタ&ラ・カペラ・ドゥカーレの国籍は不明だが、ヨーロッパ中で演奏活動を繰り広げているようである。

シャイトは、アムステルダムでヤン・ピーテルスゾーン・スウェーリンク(Jan Pieterszoon Sweelinck, 1562 - 1621)に4年間師事し、多大な影響を受けたそうである。ドイツの作曲家には珍しく、三十年戦争の時も国内に留まり、教師をしたり作曲をして戦時下を過ごした。彼の生地でもあり終世の生活の地であったハレは、ドイツの中部にあり、プロテスタント圏であったため、ローマやイタリアの様式の支配から逃れ、自由な作風を発展させた。

このディスクの演奏もドイツを感じさせる一枚である。シャインのように通奏低音のみの切り詰められた楽器編成ではなく、通奏低音以外に3種のコルネット、リコーダー、3種のトロンボーン、リュートに似たチタローネ(chitarrone)など多彩な楽器を曲によって使い分け、独自の魅力を生み出している。特に、声楽も器楽も、高音部の扱い方が巧みで、見事な美しさを醸し出している。

また、この演奏は中部ドイツの多少ごつごつした手触りも感じさせ、決して美しい演奏だけに終わっていないところが良い。

だんだん、バッハのカンタータの世界に近づきつつあることを感じさせる、興味あるディスクである。
2007-12-15 14:36 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
| シャイトを聴く / 古楽について |
トラックバックURL:http://blog.zaq.ne.jp/Kazemachi/trackback/134/
※ブログ管理者が承認するまで表示されません
HMV
ジャパン
にほんブログ村 クラシックブログへ

ニックネーム:風街ろまん
性別:男性
年齢:56歳
都道府県:大阪府

»くわしく見る